産業構造の変革への対処

 「チェーンストア理論」という言葉が1960~70年代に頻繁に使われ出した。11店舗以上を直営する小売業またはフードサービス業をチェーンストアといい、その目的は、消費者にモノとサービスを提供することによって、利便さと楽しさを普及させ、日常の暮らしの質を向上させることである。そして、私も「提供するモノと提供方法の革新により生活インフラとしてなくてはならないものになる」との言葉に感銘を受けて業界に入ったひとりだ。

▼日本の消費生活が、豊かで、便利に暮らせるような経済インフラづくりに貢献を続けて来たとの自負はあるが、残念なことに、未だにたくさんの課題も抱えている。SM業界もコロナ禍で特需にも恩恵を受けたが、置かれている課題も明確になって来た。日本が置かれている本来のトレンド下に戻った時の成長戦略、営業対策を抜本的に見直すことが必要になっている。それも新しい技術の急速な普及により、かつてない程に社会が変わりつつあるなかでの作業になる。今は、高度な産業構造の再編による変革が起き、より効率の高い産業構造を生み出し始めているのだから、商品とその提供方法が根本的に変わるかもしれないのだ。

▼新しい技術も成熟化が進めば、そのコストを下げることが出来る。そして、実用化に拍車がかかるはずだ。これらは、便利になることが多く企業規模拡大に大いに貢献するであろう。しかし、急速な変化に追いつけなくて取り残される企業も少なくないと想像される。流通業として何をどのように導入するかは、多くの企業が実験に入っている。小売業でも、ウォルマートを初め大手企業が様々なシステムの実験を始めている。

▼ウォルマートは社名をウォルマート・ストアーズからストアーズを取って改名したが、産業構造の変革に対応するため、脱チェーンスト産業の決意の表れと感じられる。トヨタ自動車も便利に楽しく移動できる方法を総合的に開発するモビリティ・カンパニーへ変貌を図っている。アマゾンも実店舗を増やし新システムの実験を開始している。成功例から学ぶ事は多くなるだろう。その為には準備が必要で受入れ態勢を作ることが最優先課題になる。

(2021・10・25)