「米国チェーンストア」から学びたいもの ②

前回、過去とは違う客観的な立場で考えてみたと書いたが、過去の店舗見学は、商品の鮮度、商品化レベル、アイテム数、フェース数や陳列量などSM業態としてあるべき姿との比較でしかなかった。見学店舗での質問も店舗概要に関するものばかりで、Hannafordの地区担当マネジャー、店長からは、「日本から来て、何故そのような事ばかり質問するのか」と逆質問されたほどだ。翌年、訪問した時は業界誌で掲載する店舗プロフィールスタイルの店舗面積、取扱いアイテム、部門別売上構成比などを一覧にしたメモを用意してくれていた。

▼このHannafordは、全国スーパーマーケット協会ともご縁が深いので、店舗戦略に関する質疑応答を期待していたに違いない。この戦略こそ大事だったのだが、日本では各社同じ業態戦略の上で、デティールでの戦いを展開して来たのかも知れない。「チェーンストア理論」の一部をもって学んだと勘違いしていたのだとも思う。勿論、小売業はドメスティックな産業であり取巻く環境が変われば戦略も変わるべきものだ。米国とは違うことが当たり前なことである。ただ、それを理解することなく、自社の戦略を論じていたことを反省した次第である。

▼米国小売業と異なるのは、出店コストに占める地価家賃が高く、建築基準の厳しさもあるので多層階にせざるを得なかった。初期の出店地であった駅周辺でのコスト高は特に顕著であった。そのコストをカバーするには部門品種を拡大した「日本型スーパーストア」を創造し、商圏拡大を目指さざるを得なかったのだろう。結果、ウォルマートのような同業他社の存在を許さぬドミナント商勢圏を日本型スーパーストアは作ることは出来なかった。

▼コロナ禍で浮き彫りにされたもののひとつに商圏に関する事がある。近くの店舗での買物が増えた。反面、必要商圏が大きい業態は大苦戦に陥った。米国では、一部の大都市周辺を除いて「限定商圏」で成立している。店舗の任務は「商圏の充実」にある。日本のSMでも限定狭(小)商圏での生き残りを戦略にしなくてはならないと思う。

(2021・10・27)