
日本のビッグストアの戦略は、大都市中心主義で、独自の品揃えを創造するより、既存業態の集合を図って来た感がある。ウォルマートがスーパーセンターにスーパーマーケットを入れた狙いは近隣商圏を深掘りし、近隣商圏の充実にあったと考えられる。
▼日本のビッグストアは、近隣商圏も広域商圏も狙う「売上規模」志向だった。結果、いろいろな業態を傘下に置き、その業態個々の売上を積み上げる手法である。イオンがキャンドゥ買収との記事が10月15日の日経新聞に載っている。低価格の商品開発力を取り込むための買収と報道されていたが、グループとしての売上規模拡大貢献に寄与することであろう。SM企業にとっては、他の業態と一緒に出店することは可能だが、自社に他業態を取り込むことは極めて難しい。SMは、商圏の充実実現のための施策が必要なのだ。
▼米国のSMを見学すると個の企業の特徴で溢れている。レイアウトや陳列形式がユニークなのだ。業態に決まりがあるはずはないのだから、フォーマットも単純に消費者にとって価値あるものか否かで変化していく。米国でも寡占化は進行しているが、人口も多いのでフォーマット間競争が激しく、新陳代謝も速い。結果、個の企業が独自のフォーマットを展開するに至っている。一方、日本のSM企業の多くが定期的に、頻度高く米国視察を実施しているにも関わらず、50年程前に米国から学んだ時のまま、あまり進化していないように思われる。限定された業態発想から、限られたフォーマット発想から飛び出せない何かがあると考えざるを得ない。日本のセブン・イレブンは、米国本社の言う「業態」否定から創業したと聞く。もし、「業態」論通りに展開していたのなら今の姿はなかったはずだ。
▼小売業の発展の歴史は、どの国においても業種→業態→フォーマット(業態類型)の順に進化している。業種とは何を主力の商品にしているかだ。業態とは販売方法の違い、マーケティングポリシーの違いとなる。そして、フォーマットはお客さまが何を求めているかを察知し、それを具体化しているものなので、このバリエーションの豊かさが重要と言える。
(2021・10・29)