ウォルマートは、自社の使命を実現するためのM&Aには積極的だが、同業企業の買収はしていない。徹底的して自前出店にこだわって来た。日本の場合は、小売業近代化の過程では売上規模を追求せざるを得ず、既存施設を引き受けるので、コスト安で店舗数を増やせたこと、面ではなく点での出店主義であったことがありM&Aは積極的に行われて来た。
▼しかも、当時の日本は、「チェーン化」されていない事業分野ばかりで、チェーン化を推進することで他を圧倒出来る分野が多く存在していた。事業の集中にこだわる必要もなく異業種への進出、異業種企業の買収にも弾みがついたのだ。ここでもセブン・イレブンが同業他社物件の買収をしなかったのは、フランチャイズ・チエーンであったことも大きかったのだろうか、面での出店戦略を徹底して来たのは例外的なものだと思う。
▼業界の発展過程では、その業界を取巻く環境に左右されざるを得ない。どんなに評価されている戦略も時間をかけ、そこの環境で構築されたものであるから、そう簡単に移行できるものではない。ウォルマートが開発したEDLPもアイディアから生まれたものではない。短期の特売にかかる店舗コスト、特に特売残処理の課題解決のために、折込チラシを止めても来店客数減をなくす方法を試行錯誤して実現したものだ。「EDLPを実施しないから問題」とコンサルタントがよく口にするが、そう簡単なものではない。これまでEDLPが「毎日特売」と誤解されたためか実行不可能なケースが多かった。むしろ、他者では品揃え出来ない商品を低価格で販売続け、顧客を創造することに近いものと理解したい。コンサルタントで島田研究室を主幹している島田陽介氏は「SBのみで品揃えするTrader Joe’s Marketを、EDLP品揃えの企業構造モデルに上げる」と話されている。
▼買物の主体が代わり、買物の仕方にも著しい変化がある。団塊世代は高齢化し、ミレニアル世代やZ世代に消費の重点が動いている。成人女性の75%が就業する時代である。米国の8~10年ごとに定期的にフォーマット再編するシステムも学びたいものである。
(2021・10・31)