「米国小売業」:消費市場の変化とそれへの対応

 コーネル大学のキャンパスからダニエル・W・フッカー教授からの動画(10月29日掲載)をご覧頂けたと思います。プレゼン資料に合わせた概要を参考に、最新の米国小売業の様子を把握して頂きたいものです。コーネル大学RMPジャパンの修了に際し、大学のあるイサカ市への訪問、周辺都市にある店舗見学を現在は出来ません。今こそ、コロナ禍での米国小売業の対応状況をつぶさに視察する必要があるのですが、叶わず残念で堪りません。

▼フッカー教授の講義内容に比べ、少し古い情報になりますが、18日から掲載開始された竹下先生の国内の小売業の状況と比較して頂くためにも、2020年度の米国小売業の状況を記載させて頂きます。一般に公開されている記事やデータを中心にまとめたもので、既に把握されている内容も多いと思います。また、いくつかの情報を横断的に集めたものですから、数値など多少の齟齬がありますが、全体の傾向として把握して頂ければと思います。

▼米国は、コロナ禍の感染者数と死者数が世界最多を記録、長期にわたるロックダウン下での生活を強いられました。専門誌『Digital Commerce 360』(旧『Internet Retailer』)によると、米国のオンライン消費額は2019年対比44%増の8611億ドルになり、消費額全体に占める割合も21.3%(前年15.8%)と急増している。『コロナは時間を早める』という結城義晴氏の著書がありますが、新型コロナウィルスによるパンデミックが無かったら、この規模の増加は起こることはなかったと考えられます。

▼食料品の伸びも生鮮ECやレストランなどからのフードデリバリーの売上も異常値と思われる増加が見られました。食品のオンライン購入額は20年に892億ドル(19年583億ドル)に伸長。21年には938億ドル、23年には1297億ドルと予想する調査会社もある程です。これも、進行中であった消費行動の変容が、加速・固定化するものと思われます。マッキンゼーでは、これらを牽引しているのは、高所得層およびミレニアル世代と指摘しています。

(2021・11・1)