[『小売業DX と人財育成について』 當仲 寛哲先生

有限会社ユニバーサル・シェル・プログラミング研究所 代表取締役

最近は小売業におけるデジタル化も目に見えて進歩してきていますね。多くのスーパーではセミセルフレジ、セルフレジの導入が進んでいます。またポイントカードがデジタル化し、PayPay のようなデジタル支払いと合わせて、携帯アプリに移行が進んでいます。他種ポイントとの交換もでき、ポイント利用の楽しみも一気に高まりました。また買い物履歴のデータと結びついて、自分の好みにあった商品やセール、クーポンの案内も個人の携帯に届くようになりました。その情報は、小売業のサービスだけに止まらず、旅行やエンターテイメント、趣味の世界にまで連携されて、それらのサービスを利用することによって、さらにポイントが貯まり、新しい各種の案内がされるという循環ができています。また、フェイスブックなどのSNSや、Amazon などのECサイトでのユーザーの評判が、販売の成否を分ける大切な要素になっています。

また小売業の運営サイドにおいては、競争力を高めるための効率化がデジタルによって進んでいます。自動発注やICタグによる商品管理の効率化、取引先との商品調達作業のデジタル化、チラシのデジタル化、事務作業(経理、人事総務)のデジタル化などが主たるものでしょう。お客様から目に見えるデジタルサービスは魅力あるとしても、今まで経験のない分野での大きな「投資」が必要となりますので、オペレーションコストをなるべく抑えて軽量にするのは当然の流れと言えます。

このような流れをリードする人材は、デジタルサービスに対する感度や全体のバランス感に優れた人です。このような人材はどうしても若い世代が中心になりますね。センスがある優秀な若い人材を社内外で探しましょう。経験豊富な中堅以上の世代は、このような若い世代の足りないところを補い、教育をし、仕事を支えるのがその役割となるでしょう。デジタルトランスフォーメーションは、従来のビジネスモデルやそれを支える分業組織に変革をもたらすものです。従来の縦割り組織や上位下達のマネージメントが大きな障害となります。これを解決できるのはトップマネージメントだけです。DXを成功させるためには、トップマネージメントが、従来組織の壁を壊し、DXを行うチームが組織横断的に機能するような新しい体制を作らなければなりません。そして中堅世代が、若手の教育やサポートする仕組みを作らなければなりません。トップマネージメントは情熱と粘り強さを持って、自ら部下の説得をし、組織改革と人材育成をやり抜くリーダーでなければならないのです。これがDXを成功させる要諦になります。