「米国小売業」:消費市場の変化とそれへの対応 ⑧

「持続可能な開発目標」の略称であるSDGsと言う言葉はすっかり定着し、見聞きしない日はないほどです。コーネル大学RMPジャパンでも11期には、セブン&アイ・ホールディングスの執行役員 釣流まゆみ先生に講師としてご登壇頂きました。

▼SDGsで掲げられた目標のうち、12番目の「つくる責任 つかう責任」では、「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の1人当たりの食品廃棄物を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品の損失を減少させる」ことをターゲットの1つに挙げています。世界の小売業で、食品廃棄物削減の最前線にいるのが米国です。

▼Walmartは、25年までに主要市場で食品を含む廃棄をゼロにする目標を立てています。実際20年度には米国事業だけで、前年度よりも生鮮・日配品・総菜の廃棄を5700万個減らしました。食品廃棄物削減行動は、大手小売企業ばかりではなく、多くがサプライチェーンの整備、発注精度の向上や在庫の適正化、消費・賞味期限が近い商品の割引販売、フードバンクへの寄付、飼料・肥料化などの再生利用などに積極的に取り組んでいるのです。

▼こうした取組みをサポートする組織もいくつもあります。食品廃棄物削減同盟(FWRA)は、食品産業協会(FMI)、食品製造者協会(GMA)、全米レストラン協会(NRA)が共同で組織したもので、廃棄物削減への手順などの情報提供をしています。米国農務省もWebサイトを設け、食品寄付に関する法律解説や再生利用法についての情報提供をしています。食品廃棄物削減イニシアティブ「10×20×30」は、天然資源・環境問題を研究し政策提言する米国シンクタンクであるWRIが提唱し、世界の大手小売業10社が、それぞれのサプライヤー20社とともに、2030年までに主要サプライヤーの食品廃棄物の半減をめざす活動です。日本からはイオン、米国からはKrogerやウォルマートが参画しています。イオンは、アジアで唯一の参画企業です。日本のSM業界も取組みが始まりました。小さなことがらでも着実に進めて行きたいものです。

 (2021・11・8)