「米国小売業」:消費市場の変化とそれへの対応 ⑨

 食品廃棄物削減では、家庭からの食品廃棄に関してもSM業界のリーダーシップは欠かせないものになると思います。米国Krogerの調査では、35%の生活者が新型コロナウィルスの感染拡大以降、消費者の食品廃棄に対する関心が高まった報告しています。そのKroger、「Zero Hunger Zero Waste」の目標を掲げ、25年までに食品廃棄をゼロに、出店地域での飢餓をゼロにすることを目差しています。18~19年の2年間で店舗での食品廃棄物総量を、13%削減、再生利用率を18%向上したとの実績もあります。

▼「Zero Hunger Zero Waste」の目標達成のために社内の取組だけでなく、消費者を巻き込んでの地域目標にしようとしています。ひとつは、達成のための基金を設立しております。この基金は、生産から消費にいたる過程で発生する食品廃棄物の量を削減する革新的なアイディアや技術を持つ企業の事業活動を支援するためのものです。消費者も、買物精算時の釣り銭など、少額を最寄りの店舗のレジなどでも簡単に寄付することができます。

▼また、家庭での食品廃棄を減らすため、PB商品の期限表示を統一しました。消費者が、捨てずに済んだはずの食品廃棄物のうちの20%程度は、期限表示をよく理解していないことによるものと考えられているので、消費期限を「Used By」、賞味期限を「Best if Used By」という表記に統一しています。国内での理解も同じレベルかも知れません。

▼そして、消費者への啓発活動への動きも活発で、過述の家庭にある3種類の食材の画像を投稿すると、最適メニューを瞬時に教えてくれる「Chefbot」もその活動のひとつになります。冷蔵庫の整理術や食材の冷凍方法、家庭での食品ごみを減らす方法までも自社のWebサイトで紹介しています。

環境問題は、全体最適が大事で、日本の納品期限緩和の取組も大手企業中心に2分の1ルールへの拡大が進展しているようです。効果的に進展させるためにも、消費者も巻き込んだ運動が推進できればと考えます。

    (2021・11・9)