米国SM最大手のKrogerもコロナ禍の需要増を追い風に業績は好調に推移しています。2020年度の売上高が1325億ドルで8.4%の増加、純利益は26億ドルで55.8%増となっています。既存店売上高も14.1%増加、EC売上高は116%増と好調に推移しています。ただ、20年度第4四半期業績は、CFCへの投資などがかさんだためか7700万ドルの最終赤字に転落しているのです。
▼コロナ禍で起きた最大の変化は、ネットスーパーの需要増と言えるのでしょう。SMの多くは、コロナ前から宅配やカーブサイド・ピックアップを強化していたのですが、コロナ禍でネットスーパーは爆発的に普及しました。本来5年はかかる規模の進化が5週間で成し遂げられたと分析するSM企業のトップもいるほどです。
▼ネットスーパーを展開するのにKrogerのような「センター出荷型」と「店舗出荷型」があります。センター出荷型は、店舗売場に影響することなく、膨大な量の注文を効率的にさばけるという点でメリットが大きいのですが、莫大なコストと時間を要するという点での課題もあります。特にCFCの投資対効果については問題視する関係者も少なくないのです。そこで、昨今注目が集まっているのが、MFC(Micro Fulfillment Center)です。自動化された倉庫を店舗併設もしくは店舗近隣に設置する300坪程度の小型センターで。初期費用や稼働までの時間を軽減出来ることから、WalmartやAlbertsonsがこのMFCの導入を積極的に進めております。市場全体でもMFCがフォーカスされる傾向にあるようです。
▼長い歴史の中でも、異例の規模で設備投資を行うKrogerですが、これからの世界で、ECが売上の大きな柱になることは疑いのない事実でしょう。ただ、莫大な投資とその回収については別の問題になると思います。ただ、消費トレンドの変化を機敏にとらえ、リアルとネットの双方で対応することは重要な課題になります。米国SMの動きから目が離せない状況にあると思います。
(2021・11・12)