「米国小売業」:消費市場の変化とそれへの対応 ⑬

 コロナ禍後の対応について、米国のSM企業は、家庭で食事をする機会が以前よりも増えたことから、「フレッシュ(鮮度)の重要性」を指摘しています。生鮮食品や惣菜、ベーカリーにおける「鮮度」は、コロナ後も重要になると考えているようです。また、自宅調理の機会が増えた結果、食材に対する関心も高まり、品質を追求した消費行動が続くとも見ています。チーズやビール、ワインなどの嗜好品で品質の良いものに注目があるようです。

▼そして、スマートフォンをはじめとする「モバイル対応」の強化を挙げています。コミュニケーションツールとして、また店内での買物時やカーブサイド・ピックアップまで、あらゆる側面でスマートフォンの活用が進んでいくと考え対応が始まっているのです。

▼Walmartは、コロナ禍で社会環境、消費動向が大きく変わるなかでも、変化を瞬時にとらえて機動的に対応する経営力を発揮し、2020年度で350億ドルを超える増収を果たしています。パンデミックで店内の客数制限や外出規制などリアル店舗に対する障害によってECへ一気にシフトしたわけですが、それまでにデジタルへの投資が十分になされていたからでしょう。2020年度の連結売上高は5591億5100万ドル(対前年比6.7%増)、営業利益高225億4800万ドル(同9.6%増)、最終利益高は135億1000万ドル(同9.2%減)でした。減益の理由は税金関係の財務処理によるものです。営業利益高は9.6%増ですので実質的には大幅な増収増益だったと言えます。既存店売上高も高い伸びを記録しました。ガソリン売上高を除外したものですが、Walmart USが8.5%増、サムズクラブが5.3%増、米国事業合計で8.1%増でした。

▼Walmart に限らず生活に最低限必要とされる「エッセンシャル」に認定された小売企業のほとんどが史上空前の増収増益を記録したのですが、急激な変化にほとんどの米大手小売企業は嵐のような変化に対応しきったと言えるのです。米国中が世界最大規模で感染症に侵されても、米国小売業は最大の成長産業だったのです。

 (2021・11・13)