「米国小売業」:消費市場の変化とそれへの対応 ⑲

昨日、Albertsonsがカーブサイド・ピックアップ「Drive Up & Go」に力を入れていると書きましたが、それと同時に配送サービスの拡充にも手を緩めていません。注文から2時間以内に配送する即時宅配サービスを「セーフウェイ」や「ボンズ」などを含む店舗で実施しているのです。

▼ネットスーパー事業の成長には、それを支える物流インフラの構築も欠かせません。AlbertsonsはMFC(マイクロ フルフィルメントセンター)の設置を進めています。既にカリフォルニア州サンフランシスコ近郊とサンノゼにあるセーフウェイの店舗に併設させてMFCを稼働しています。これは、業界トップのKrogerが進める1万坪前後のCFC(カスタマー フルフィルメントセンター)の展開とは大きく異なる戦略です。

▼AlbertsonsはMFCを積極的に拡大する理由として、「地域性」を挙げています。地域によって取り扱う商品が異なるため、各店ごとの固有の在庫を持つ事ができるMFCを設置することが有効なのでしょう。また、商圏の中心にある店舗を配送拠点としたほうが配送時間の短縮につながるというメリットを重視しているようです。さらに今年3月には、遠隔操作の小型電動カートを使った宅配テストを開始すると発表しました。ここでも、スタートアップ企業のTortoiseと提携して実施するもので、WalmartやKrogerが実験している自動運転を行う「ロボット宅配」とは異なり、「リモート操作による宅配」を行うもののようです。そして、BOPIS(Buy Online Pick-up In Store)関連の効率化とサービス向上にも力を注いでいます。その一環として稼働テストを行っているのが、冷蔵・冷凍機能付きのピックアップキオスクです。ウォルマートで話題であった大型のピックアップ専用ロッカー「ピックアップタワー」は、温度帯の違うものを管理できずに、現在は縮小してしまったようです。

▼日本では、Albertsonsへの注目は大変に高い時期がありましたが、最近は少ないようです。しかし、MFCの設置、配送用電動カートやピックアップキオスクのテスト稼働など、買物利便性と運営効率向上のためのDXに、全社を挙げて取り組んでいるのです。

(2021・11・19)