ウォルマート、無人配送トラックの実用化に動く

今月20日、米国小売業でラストマイル配送の革新に加え、コスト削減効果が大きい倉庫内の移動や店舗間の移動に注目して改革に取組む企業が増えていることをこのコーナーで報告しましたが、日経新聞18日付け朝刊にウォルマートが、無人配送トラックの実用化に動くとの記事が載ってました。無人トラックによる物流センターから店舗への配送を開始したものです。

▼物流センターと店舗を結んだ輸送を「ミドルマイル」と呼んで、ラストマイルと区別していますが、このミドルマイル配送を無人で行うのは世界初とのこと。場所は本社のあるアーカンソー州ベントンビル。自動運転のスタートアップ企業、ガティック(Gatik)社と組み、完全自動運転のトラックによる無人配送を実用化したものです。ウォルマートは、最初2マイル(3.2㎞)ルートで有人での自動運転システムのテストを開始し、今年8月からは完全無人状態で実験していたと言います。現在、2台の無人トラックが毎日12時間、物流センターとネイバーフッドマーケット間の往復7.1マイル(約11㎞)をループするものです。

▼ウォルマートは半径10マイル(約16㎞)圏内に米国民全体の90%をカバーする4700店の店舗網を持っていますので、実用化すれば、短時間での宅配を低コストで実現する大きな武器となるに違いありません。リアルの店舗網を使うことでAmazonには真似できないネットスーパー用の物流ネットワークを構築できることになります。特にハブ&スポーク方式で店舗間を結ぶミドルマイル物流に無人トラックを導入できればルーラル地区においても効率的なネットスーパー網になるでしょうし、ウォルマート以外にSMがない地域が多い米国で、ミドルマイルの勝者はコミュニティ総取りが可能となります。

▼年内には、フォード・モーターとウォルマートと独フォルクスワーゲンが共同出資する企業のアルゴAI技術を用いた自動運転車を使い、フロリダ州マイアミなどの3都市で家庭までの宅配にも活用範囲を広げる予定とのこと。米国では、ミドルマイルの覇者がネット通販最大手にネットスーパーで対抗する時代になったようです。

 (2021・11・23)