埼玉・武蔵ワイナリー訪問

早稲田大学ビジネススクール(早稲田大学大学院経営管理研究科)で、人気の高い講師、入山 章栄先生の授業を受けました。『センスメイキング理論』という理論の話がありました。ミシガン大学のカール・ワイク教授が中心となって生み出した理論で、日本語的には「納得」「腹落ち」とのことで、イノベーションを推進する際の重要な要素とのお話しでした。

▼教授には申し訳ないのですが、今日のメッセージは、この経営理論ではなく、「納得」「腹落ち」の言葉に誘われて、あるワイナリーの訪問記にします。コーネル大学RMPジャパンの副学長の荒井 伸也先生も無類のワイン好きと聞いておりますので、一緒に飲まれた修了生の方々も多いと思います。

東京・池袋駅から電車で約1時間。東武東上線とJR八高線が交わる小川町にある「武蔵ワイナリー」まで、勤労感謝の日を利用して出掛けて来ました。埼玉県中央部に位置する小川町は豊かな自然環境を生かした和紙や日本酒造りで知られておりますが、「有機農業の町」でも有名です。そして、「ヤオコー」や「しまむら」の創業地でもあります。武蔵ワイナリーはこの町でブドウ栽培から醸造まで「完全有機」の自然派ワインを生産する、全国でも稀有な醸造所です。ワイナリーの代表・醸造責任者の福島有造さんは「葡萄の自然な味わいを楽しんで下さい。国内ではここまで有機農法や天然醸造にこだわったワインはないはず」と目を輝かせておりました。

▼福島さんは2010年から小川町で有機農法を学び始め、11年から無農薬のブドウ生産に参入し、醸造の際、酸化防止剤である亜硫酸塩は使用しない。培養酵母も添加せずに天然酵母のみで醸造しています。ブドウの有機栽培は高温多湿の環境に適さず、病気になりやすいために湿気や雨から守るための雨よけを設置したり、害虫はこまめに駆除したりするなどの工夫を重ねて、質の高いブドウの収穫できるようになったとのこと。商品には、ラベル素材やデザインまでこだわりがあるのです。すぐ横には耕作放棄地を活用した約3万㎡のブドウ畑があり、周囲には森林や池などが広がる里山でした。

▼北海道大学工学部を卒業後、銀行勤務を経て不動産事業会社を経営、そして自然と共生する有機農業に可能性を感じての就農、後事業展開へと続く物語を聞くと、商品に対する「納得」「腹落ち」をしないはずがありません。実際にワインを飲むと、ほのかな果実そのものの香りが口に広がり、どんな食べ物にもよく合うすっきりとした味わいを感じます。このようなこだわりの物語を商品に付けて、売場づくりを実現したいと思いながら帰宅しました。

(2021/11/25)