1968年4月の事ですから、50年以上も前のことになります。東京国税局の調査で20億円にのぼる使途不明金が発覚し、事務職員の自殺や失踪が相次ぐニュースが流れました。丁度、各地の大学で運営や教育のあり方をめぐって大学当局と学生の主張が対立して紛争が燃え盛っていた時期です。東京大学では紛争の結果、1969年の入学試験は中止になった程の状況だったのです。
▼それまでのワンマン体制が崩壊するきっかけになったのが税務当局でした。その大学が日本大学で、私も在校生のひとりでした。それまで紛争に無縁であり、無風だった日本大学でも学生が決起し、日大闘争(紛争)に繋がったのです。この時の会頭が秋田県から上京して当時の日本大学専門部に入学、柔道部で名を上げ、大学職員となって頭角を現し、戦後のこの学園に君臨した古田重二良会頭でした。日本一のマンモス私学を築いた経営手腕に抵抗できる人はいなかったのです。今回、脱税容疑で逮捕された田中英寿理事長は現代版の古田会頭に見えます。青森県の農家の出身、相撲部で活躍し、その後大学に残り多くの選手を指導しつつ、経営トップへと上りつめた。そして税をめぐる不正で失墜したのですから。
▼きょうは、SM(スーパーマーケット)業界とは全く関係のない話題になってしまいました。2年前のアメリカンフットボール試合の反則タックル事件、そして、こんどの事件も元理事の背任から始まっているのです。大学として徹底的に調べ上げるべきなのに、どうも自浄の機運が乏しく感じられます。組織の病弊と言ってしまえば簡単なのですが、卒業生として残念でなりません。
▼私立学校には、国公立の学校とは異なる特性があります。私人の寄附財産等によって設立・運営されることを原則としてますので、建学の精神や独自の校風が強調され、所轄庁による規制制限がなされているのです。当然、一方では私立学校にも公共性が求められます。その為に民法法人とは異なるいくつかの法的規制があり、その一つが、業務執行の諮問機関として評議員会の設置義務です。今、評議員会のメンバーを学校外の人だけにし、理事の選任・解任や予算・決算、合併や解散などの重要な決定を行えるように法令改正する内容の話が持ち上がっておりますが、教育という極めて大切な問題ですので、ガバナンスの問題だけでなく、現場の意見の反映や、直接の関係者である学生の考えも、よく踏まえたうえでの改正がなされることを願うばかりです。
(2021・12・14)