「薄利」は「多売」に繋がるか

「薄利多売」という言葉があります。薄利多売とは利益の少ない商品やサービスを大量に販売することを意味する言葉です。薄利多売には様々なメリットがありますが、主なメリットは、多少の顧客離れが起きても売上や利益が大きく変動しない・しにくいこと、多くの新規の顧客を獲得できるということになるでしょう。そのため薄利多売によりたくさんの商品を沢山の人に売ることで大きなメリットが生まれます。

▼ところが、商圏が限定化し人口が減少する中では、必ずしも薄利が多売に繋がらないのです。薄利にしても、少売にしかならないケースも出て来そうです。ただ、コロナ禍により、買物行動がシビアになり、これからも節約志向の高まりが予想されます。話題のオーケー、ロピアに代表される業態の店舗が勢いを増しそうです。ロープライスは大事なのですが、薄利でない販売が必要になって来ました。安く売っても儲かる体制作りが必要なのです。

▼SM(スーパーマーケット)業界内でもディスカウント業態の店舗が勢いを増す流れの中、ヤオコーが新たに展開したのが、「フーコット飯能店」です。2017年にディスカウント形態の「エイヴイ」を完全子会社化しましたが、相乗効果を高める動きはあまりありませんでした。今回、エイビイのノウハウを活かしながら、フーコット1号店を今年8月、埼玉県飯能市で立ち上げました。「ヤオコーグループ」との記載は、ホームページやチラシの一部にありますが、売場づくりは脱ヤオコーに徹しています。ヤオコーが展開する店舗として来店する人は限定的だと思われます。出店余地も限られる中、これまで取り切れていない客層、生活性向を取り込み、グループとして商圏内シェアを高める挑戦と見ることもできます。この店は居抜き出店でしたが新規開店も予定しています。オペレーションは、エイビイのノウハウを活用し、ローコストでの運営を実現し、より少ない人員でのオペレーションを可能にできれば、予想される採用難にも対応でき、出店のスピードアップも上がると思われます。

▼課題は、生鮮センター供給のメリットが出せる販売量の確保、住関連の品揃えカットの是非、手間暇かかる惣菜の展開などにあると思われます。

消費者の節約志向が高まるなか、価格競争を展開するだけでは、収益面で自分の首を絞めかねませんから、どのような体制づくりをし、安く売っても儲かる店を創造するのか、楽しみなところです。

(2021・12・16)