自民党総裁選や衆院選で岸田首相や野党までもが、「新自由主義の転換」を訴えておりました。日本における新自由主義とは何なのかを考える必要がありそうです。1970年代の米国で生まれ、レーガン政権、英国のサッチャー政権、日本の小泉政権などが導入し推進した経済政策における考え方のひとつです。
▼この新自由主義は、自己責任を基本に小さな政府を推進し、均衡財政、福祉・公共サービスなどの縮小、公営事業の民営化、規制緩和による競争促進、グローバリズムなどを特徴にします。それは、大企業や資産家などが、より富裕化する事で投資や消費が上がり、中間層・貧困層の所得も引き上げられ、富が再配分されるという考え方になります。しかし、現実は投資や消費は増えず、富の集中、蓄積・世襲化が進み、かつてないほどの格差と貧困が拡大しているのです。
▼「若者にとって新自由主義はデフォルト、初期設定なのです」と朝日新聞(12月14日)に政治思想研究者・藤井達夫さんの話が載っておりました。「新自由主義の社会では、誰もが企業家のようにならなければなりません。自己を磨いてリスクを管理し、競争し、投資し、打ち勝っていく。しかも、自己責任のもとで。2004年のイラクの人質事件の時、自己責任という言葉が蔓延したのが象徴的でした。いまの若者が物心のつく頃には、そんな新自由主義的なメンタリティーが当たり前になっていた。小さな政府、規制緩和、民営化。中でも影響が大きかったのが雇用の規制緩和です。非正規労働者が増え、富の偏りが生じて、格差社会になった。別の社会のありようを知らない若者たちは、これが社会だと思い込んでいる」というのです。
▼この事は、若者の就業観にも影響を与えているように思えてなりません。就業しても長続きせず、1~3年で転職するものが極めて多い原因のひとつにあるような気がします。「ほんとうにやりたいコト」まで行かなくても、もう少し「面白い」仕事がドコかにはあるはずだというのが転職理由です。「面白くする」のは、個人の努力だけでなく、組織全体で解決する可能性がある事を伝える必要があります。人手不足が再び叫ばれ始めました。若者の価値観に沿ってみたいものです。
(2021・12・19)