小売業の「広告ビジネス」への関与

今年、10月に米国から日本に上陸したアプリ「Miles(マイルズ)」が話題を集めています。アプリをスマートフォンにインストールし、位置情報の取得を“常に許可”に設定すると、日々の移動が記録され、移動距離に応じて自動的にマイルがたまるもので、GPSが受信可能な環境なら、世界中の移動で貯められるというものです。

▼移動の手段は問わず、スマートフォンのデータに基づきAI(人工知能)が移動手段を自動判定するのです。環境に配慮した移動である徒歩とランニングには10倍、自転車は5倍、バス・電車・船・スキー3倍のマイルを付与し、持続可能な社会づくりにも配慮されています。移動するだけで特典を享受できるユーザー、動線を思うままに“創造”できる小売業と双方のメリッ卜を追求する事が出来そうです。

▼これは、クーポン使用に応じて、その発行元からアプリ開発側に広告宣伝費として一定金額が振り込まれる仕組みとなっている「広告ビジネス」です。単純なサービスのようですが、活用範囲は広そうです。時間帯別にクーポンを発行すれば人流の分散にもなるでしょうし、ショッピングセンターでは回遊性を高めることにも繋げられるでしょう。店内に指定ルートを設定してポイントを付与が出来れば、重点部門への誘導にもなります。

▼11月のコーネル大学のフッカー教授の話された米国小売業の動きですが大変興味深いものがありました。GoogleやFacebookは、サイバー空間で利用者にマッチした広告を提示し続けることで莫大な富を生み出しているのですから、この2社は「広告ビジネス」を展開しているのです。そして、広告ビジネスは、リアル店舗展開の企業も享受出来るのです。Walmartは、約5000店に毎月6億人が訪れますので、店舗のメディア化が進んでいます。ネットスーパーのアプリを活用させることで、モノを売るだけでなく、モノを PRすることでメーカーから宣伝費を獲得しているのです。今後は、顧客情報の活用にもつなげるものと思われます。店舗内のデジタルサイネージを利用したPRは、新たな収益の柱なりつつあります。教授の話にありましたが、動機はそうせざるを得なかったのかも知れませんが、「中小規模の企業でもあらゆる側面を広告化してしまう技術」は、見逃せなくなるはずです。アスリートのユニフォームを宣伝媒体にするように、リアル店舗がこれまで気づくことのなかった可能性に満ちあふれた活用があるのかもしれません。

(2021・12・20)