『第3回 小売業DX と業務改善について』 當仲寛哲先生

有限会社ユニバーサル・シェル・プログラミング研究所 代表取締役 

デジタルトランスフォーメーション(DX) というと、何か現実感の乏しい途方もないデジタルを使った離れ技と思っている方もいるのでは無いでしょうか。ところが実際にはそうではなく、現実的な業務改革の4ステップを踏んでデジタルトランスフォーメーションが結果的に起こるのです。

第1ステップは、コンピュータを使わないでもできる業務改善です。いきなりコンピュータを入れるのではなく、まず業務を整理整頓することが肝要です。よく言われる、5S(整理、整頓、清掃、清潔、躾)がそれにあたります。同じものは一つにまとめ(=整理)、探しやすくしておき(=整頓)、無駄なものはなくし(=清掃)、その状態を維持する(=清潔)。それが関わるメンバー全員に身についている(=躾)ことです。

第2ステップは、具体的な改善です。必ずしもコンピュータを使う必要はありませんが、コンピュータを道具として捉えてください。手計算するよりコンピュータを使った方が速くないでしょうか。エクセルに毎回手入力するより、コンピュータで自動連携させた方が、楽で正確ではないでしょうか。コンピュータは「記録、コピー、検索、計算、通信」の道具です。そのような改善の「ツール」としてコンピュータを導入していくのが第2ステップです。

第3ステップは、「徐々に繋げていく」です。各仕事はインプットとアウトプットからなっています。各仕事は人が担っています。第3ステップは、仕事と仕事の間をつなぐ部分にコンピュータを導入し、モノやコトの流れを自動連携させていくことです。人間がやっている作業が単純な作業なら、それも自動化できるかもしれません。

第3ステップによって、販売計画、商談、発注仕入、販売、顧客までの流れ全体が見えるようになり、例えば、取引先の出荷から、物流センターの荷受、庫内作業、出荷、店への配送、店での荷受、バックヤード、バックヤードから棚割への補充、買い物かご、レジ通過、店からの退出に至るまで、どんな商品がどこで滞留しているのか、細かなレベルでわかるようになります。部分最適にとどまらず、全体を最適化するような提案が出やすくなります。

第4ステップはいよいよデジタルトランスフォーメーションです。全体最適の観点は、役割同士の統廃合を推進します。これは組織の統廃合も意味し、経営そのものの変革が起こります。改革メンバーの人間力は高まっていることが必須で、「自律(自分ごととして考える)」「機会(自分から
行動を起こす)」「気付き(センスの良さ)」を涵養する、社内教育や仕事の環境の整備がこの4ステップを通じて必要なのです。