GMS(総合スーパー)の動き

今月16日、イトーヨーカドー日立店(茨城県日立市)の閉店の様子がTVニュースで流れていた。JR日立駅前にあるこの店舗、何年か前に閉鎖が決まった際、日立市に存続を要請され、子どもの遊び場を設けたり、書店誘致するなどしたり策を講じて改装開店した経緯がある。開店時、約130億円あった売上げは「最近では、7割程度落ち込んでいた」とのコメントを聞いた。

▼商圏人口の減少と変化対応の遅れで苦戦が続いていたところに、コロナ禍が招いた外出自粛。地方の古い大型店の置かれた状況をそのまま表している事例なのだろう。22年2月期第2四半期(上期)決算は、イオンリテールが186億円の営業赤字。前年同期に比べれば大幅な改善だが、上期2期連続で3桁の営業赤字となった。イトーヨーカ堂も黒字は何とか確保したものの、営業利益は11億円。売上高営業利益率は0.2%に止まっている。

▼GMS(総合スーパー)のノンフード部門の売上構成比は3割程度まで落ち込んでいる。これまでは、食品の利益に支えられていたのだが、価格競争が激化し、人件費の上昇などで利益が出にくくなっている。また、高齢化、共働きの増加は平日の買物を限定的にし、コロナ禍で近隣店舗での買物にシフトするようになった。そのエリアにないものはネットで買う消費行動も強まっている。GMSのこれまでの事業モデルのままでは、コロナ禍の収束を待っても厳しさは変わらず、大型店閉鎖の事態を招きかねないということにもなっていると思われる。

▼こうしたところから一気に本格化してきたのが、デジタルを活用してのコスト削減、売上げアップ、ネットスーパー、ネット通販の拡大路線という事になる。

デジタル活用によるコスト削減では、イオンに続き、イトーヨーカ堂が一部店舗にスマホレジを導入、対面レジの削減を図っている。また、加工食品を対象にAI活用の自動発注を全店に導入した。イオンは値引きの適切な価格とタイミングが分かる「AIカカク」をデリカ部門に導入。値下ロスを1.2%削減する成果を上げているという。

販促、情報発信の主体も、スマホアプリを活用したクーポン配布、キャンペーン、新商品紹介などデジタル活用に移っており、チラシなどを減らしてコスト削減につなげる動きも出ている。クーポンと並んで利用が増えているのが予約販売商品の拡大だ。受け取るための来店動機にもなる上、産地直送の高級食材を限定販売するなど、客単価アップにもつながっている。

ネットスーパーは、楽天西友は前年比4割増のペースで伸びている。イトーヨーカ堂も、23年に新横浜にセンターを開設し周辺30店のネットスーパーを移す計画だ。イオンがオカドと提携して開始する注目の全自動倉庫からのネットスーパーは23年稼働予定で、センター建設が着々と進んでいる。ネットで日々の買い物をするということがいよいよ本格化してきたことを思わせる。GMSのEC、ネットスーパーは、スーパーマーケットにも強い影響を与えそうである。

(2020・01・18)