英国に見るネットスーパー コロナ禍でセインスベリーが躍進

昨日、GMS(総合スーパー)の中で話題に挙げた「ネットスーパー」だが、コロナ後の消費者行動についての各種調査の中で、多くが「スーパーの配送とクリック&コレクトの利用拡大は今後も続く」と予測している。グローバルでは、ネットスーパーがニッチなサービスからマスサービスに変化して、買い物スタイルとして習慣化するとの勢いなのだ。一般社団法人 全国スーパーマーケット協会主催の「Future Store“NOW”2022」第1 回推進協議会時で、株式会社10X(東京都中央区 矢本 真丈CEO)の話を聞く機会があったが、その(株)10Xが、英国のスーパーマーケットSainsbury’s(セインズベリー)に関するホワイトペーパーを公開している。(2021年10月20日)

▼英国における、ネットスーパーの店舗売上に占める割合は2020年1月には8%だったが、2021年1月には16%を記録しており、大幅な成長を遂げているというものだ。生鮮、例えば肉・魚類などの生鮮食品についても、これまでネット購入は避けていた家庭でも、購入を開始したところが多数に上っている。2020年には国民の過半である59%もの人がネットスーパーを利用しているのだ。それまでネットスーパーの中心的な顧客層は子育て世代だった。しかし、コロナ禍に入ってリタイア世代を含む幅広い層において利用が拡大している。

▼コロナ禍の影響でネットスーパーが急激に広がったのだが、その需要の増加に急速・柔軟に対応できたSainsbury’sやTesco(テスコ)などの大手小売が、顧客が必要としたタイミングで安定したサービス提供に成功。新規顧客の獲得や顧客満足度の向上を達成した。一方、対応が遅れたOcado(オカド)においては、顧客が利用したい時にサービスを利用できない事例が多発し、多くの顧客の離反に繋がった。従来は、ネットスーパー専業Ocadoが業界を牽引していたのにだ。

▼日本国内においても、ネットスーパーの需要増加に対応可能な供給インフラを準備することが不可欠だろう。この公開資料によると、次の3点が必要と述べている。

  • ネットスーパー対象店舗数の拡張 – オペレーションのマニュアル化やシステムの定型化
  • 店舗ごとの注文対応キャパ拡張 – ピックパックキャパ拡張・効率化、バックヤードなどの追加スペース確保
  • 店舗からの受け渡しキャパ・手段拡張 – 配送業社との提携強化、自社配送の拡張、Click & Collectサービスの立ち上げ

これまでのスーパーマーケット事業の延長で考えると、決して低い障壁ではない。本格的に取組む際は、個別企業に合わせたオペレーションシステムの設計や構築などを支援してくれるパートナーと手を組みことも視野に入れる必要がありそうだ。

(2022・01・19)

※ ホワイトペーパー:「白書」の意味だが、マーケティング用語としては、企業が解決すべき課題と要因を分析し、解決を実現する自社ソリューションの紹介などをまとめた報告書のこと。