Trader Joe’s(トレーダージョーズ)は、ヤオコーの商品政策や売場づくりに影響を与えている企業のひとつだ。Wegmans(ウェグマンズ)、Whole Foods Market(ホールフーズ・マーケット)などからも影響を受けているが、ポイントは、SB(ストアブランド)商品中心の品揃えで、消費者から高い満足度を獲得して売上高を堅調に伸ばしているという点だ。また、ヤオコーの店舗で見られる、低めの陳列棚や対面式の売場、スポット照明などを導入するなどの取り組みは、これら企業の売場にならったものだ。
▼Trader Joe’sの経営戦略については、島田研究室の島田陽介先生が米国研修時によく話されていた。島田先生は、ヤオコーの「個店経営」の礎を築く際にお世話になった先生で、チェーンストア産業を構築するというミッションをもって、1980年代当時、月刊雑誌『販売革新』などで高山邦輔先生、石原靖曠先生、山本浩史先生、佐藤敬喜先生などと流通業界を啓蒙指導した方だ。
▼Trader Joe’sの企業(組織)構造について、島田先生は次のように評価している。
SB商品しか扱っていないので、アイテム数は限定的だ。限定されたアイテムなので、必要な売り場面積は通常のSM(スーパーマーケット)の1/2、1/3以下で済む。必要な在庫量、在庫金額も1/2、1/3以下で済むのだ。店舗面積も店舗での労働力も同様に少なく出来る。従って店舗立地選びも楽なはずだ。居抜き出店など他社よりローコストで展開できる。また、SB商品なので、MD(マーチャンダイジング)に集中できる。勿論、SB商品全てが自家製である必要はなく、製造を依頼するもの、商品開拓してローカル商品を品揃えする場合もある。SB商品なので荒利率は大きい。安く売っても利益確保しやすい。商品ロイヤルティも高いのでセールを展開せずに集客できる。商品の魅力で集客するので、特別な売場デザインなど不要なのだ。そして、新商品で新しい顧客体験を積み重ね続けられるというものだ。
▼ベビーブーマーたちの為の新しいグロサリーストア(食料品スーパーマーケット)を創りたいとの願いから生まれたTrader Joe’sは、「教育を受けているが、それに見合った賃金を受け取っていない人たち」をメインターゲットに創業した。「世界恐慌後の1932年当時、大学へ行くことができた人はわずか2%だった。しかし1965年になると、大学進学率は60%にもなり、この人たちがマーケットを支配する人たちになった。ベビーブーマーである」「教育を受けた期間が長い人ほど、お酒をたくさん飲むとの新聞記事があった」と創業者のJoe Coulombeは言っている。企業展開の物語と利益を生み出す独自の企業(組織)構造を確立していることになる。
(2022・01・27)