「競争優位」のため、経営活動を一度俯瞰してみませんか

「競争優位とは一体何か?」と聞かれて戸惑った。「戦略経営の目的は、競争優位をもたらす戦略の選択・実行を実現する事」と戦略経営プロセスの概要を話した時にだ。「競合他社よりも多くの経済的価値を生み出せる時、その企業は競争優位を保持している」と経営学の教科書に記述があった。ここでの経済的価値とは、顧客が商品・サービスに対して支払っても良いと考えている金額とその商品・サービスの生産・販売にかかった総コストとの差であり、競争優位の大きさは、ライバル企業が生み出す経済的価値との差になる。

▼昨日も、少し触れたのだが、戦略経営ブロセスは、企業のミッションや目標を出発点として、戦略の選択・実行に求められる分析へと進んでいくものだが、経済的価値を創出する「活動」を特定することから始めるアプローチもある。コーネル大学RMPジャパンの講義に先立つオリエンテーションの中でも紹介したアレックス・オスターワルダーとイヴ・ピニュールが著書『ビジネスモデル・ジェネレーション』で提唱したものが有名である。2人はこの著書でビジネスモデルのテンプレートを提示している。9つのボックスからなるものだが覚えている修了生もいると思う。

▼これは、全体像を一覧できることから、「ビジネスモデル・キャンバス」と呼ばれている。キャンバスの中心に描くのが、顧客にどのような価値を提供するのか、どのような課題を解決するのか、いかなる顧客をターゲットとするのか等を記述した「価値提案」になる。この価値提案が決まれば、それをもとに取り組むべき「主要活動」、その活動を行うために確保しなければならない「主要リソース」、そのリソースを手に入れるために必要な「主要パートナー」を決めることができるというものだ。また、価値提案はその企業にとって重要な「顧客関係」、その顧客に価値を届けるための「チャネル」、そして、ターゲットとなる「顧客セグメント」の要素を決めるうえでも役に立つ。これらの活動が一体となって、企業のコスト構造や収入の流れをよりよいものにすることで競争優位を実現するというものだ。

▼この「ビジネスモデル・キャンバス」には、戦略の実行に向けて組織変革に取り組むことや競争という要素をうまく捉え切れてない等の指摘もあるようだが、幅広い企業活動をまとめるうえで便利なことは確かだ。企業の諸活動が互いにどう関連し合い、コストや収入に対して最終的にどのような影響を与えるかをまとめることもできる。

一度、自分の企業の事業内容をこのテンプレート上に落とし込んでみたらと提案したい。

(2022・02・03)