『第4回 小売業DX と顧客サービス』 當仲寛哲先生

有限会社ユニバーサル・シェル・プログラミング研究所 代表取締役

1970年代における日本はいわゆる高度経済成長期で、対外においては日本が得意とする高品質な工業製品をどんどん大量生産し、他国に輸出販売することにより、大きな富を得ました。その背景にあったのは、当時の低い給与水準や勤勉さがありました。より良い生活を目指して、日本人の大半が足並みを揃えて、大量生産された日用家電、住宅マンションを購入しました。スーパーマーケットも「大量仕入、大量販売」によって大きく躍進しました。ところが、1990年代のバブル崩壊以後、節約、効率化の名の下、コスト削減、人員削減が行われました。コンピュータも当時は「金食い虫」で、いかにダウンサイズしてシステムコストを下げるか、がテーマになりましたが、コンピュータの理解が浅い会社は、システムベンダーの言うなりにお金を払うしかなく、今に至ります。賢明な会社は、コンピュータによって様々なコストを精緻に管理して無駄を削減し、利益コントロールをしてきました。

2000年代に入り、アメリカを中心にインターネットビジネスが隆盛し、コンピュータを顧客に対するマーケティングのツールとして使うようになりました。このタイミングでシステムは「経費」から「売上原価」に転じたのです。インターネット販売がリアル店舗の売上と双肩を並べるようになり、効率化で失われた One2One マーケティング、接客販売、丁寧なアフターフォローがコンピュータを使った劇的な効率化が生み出した余力で取り戻され、さらなる顧客サービス向上につながっています。システムを相変わらず、必要悪な経費と捉えている旧態依然たる企業は、1990 年代から進歩しておらず、
小売業を本業としていながら、Amazon や楽天の後塵を拝してきました。

インターネットはその手軽さから、様々な業種業界の壁を壊してきました。例えば、Facebook などのコミュニティサイトの商品紹介からの販売も盛んに行われるようになり、結果的に小売に参入してきています。このような時代、消費者はより「本モノ」を求め、商品や生産現場、インフルエンサの「生」の情報を求めるようになっています。今や、小売自体のブランドよりも、商品のこだわりの情報や、生産のストーリー、魅力ある人のオススメの方が、説得力があります。小売業はもはや「会社」の枠を越えて、生産者、メーカー、インフルエンサ、消費者を巻き込んでブランディングの提供をしていかなければなりません。そのためのツールとしてコンピュータを使いこなさなければならなくなっています。

コンピュータやインターネットの持つ破壊力は想像以上の現実となって私たちに降りかかってきています。日本の30年の遅れを取り戻すのは容易ではありませんが、熟慮して焦点を定め、地道に人財育成とコンピュータリテラシの向上に取り組むのが一番の近道であるのは間違いありません。