飛行機型ドローンで超速宅配を開始するWalmart。その真意は?

2013年、Amazonのジェフ・ベゾスがドローン宅配「Amazon Prime Air」の構想を公表した。物流センターから飛び立つドローン宅配のイメージ動画に驚いた。しかし、今日までAmazonの構想は実現していないし、実験などのニュースも聞こえてこない。それと比べるとWalmartの積極的な姿勢は際立っている。コーネル大学RMPジャパンの講師、Panasonicの大島 誠さんが現地レポートをYouTube上で公開している。

▼Walmartは、配送に制約が多い地域や災害被災地への緊急輸送など、空からの配送に活路を見出そうとしている。ドローン開発のZipline社と提携、自律飛行ドローンによるオンデマンド超速宅配サービスを公表した。このドローンは翼幅3.4mの飛行機型で、機体上部のプロペラを動力源とする。従来型の回転翼ドローンより悪天候に強く、最高速度は時速80マイル(約128Km)に達するという。サービスエリアは50マイル(約80Km)圏内、一度に運べる重量は4ポンド(約1.8kg)まで。対象商品は市販薬やバンドエイドなどヘルス&ウェルネスとなっている。ただ、自力滑走で離陸できないので発射台が必要になる。それに、ホバリングができないためパラシュートでの投下になり、その精度「駐車スペース2台分」という。帰還は、二つのタワーの間にケーブルを張り、飛行中のドローンの尾翼の下にあるフツクを引っ掛ける方法をとることになる。

▼Walmartは違ったタイプのドローン宅配「Delivery on the fly」も開始している。これは、ドローン開発会社Droneup社と組んでのもので、通常の回転翼タイプのドローンになる。注文者宅の裏庭に到着すると80フィート(約24m)まで下降、ホバリングしながらケーブルを地面にまで降ろして届ける。最大積載重量は3ポンド(約1.4kg)。ただし、自律飛行できず、機体に据え付けられたカメラでモニタリングしながら操縦するので配達対象地域は管制塔から数マイル程度に限られてしまう。

▼17日の、コーネル大学のゴメス教授、フッカー教授とのディスカッションの時、「Walmartのこの戦略、飛行機型ドローンなどの高速デリバリーは、本当に必要なことなのか?」との質問が修了生から出た。フッカー教授は、「Walmartは、デモ効果を狙ったものと思われる。DX(Digital Transformation)へ投資する姿の宣伝効果になる。それは、優秀な人材確保への布石とも言える」と解説してくれた。小売業の概念が変わり始めた。それも加速度的に変わり始めている。

(2022・02・21)