WalmartとAmazonのテクノロジーに関するイノベーション合戦がし烈だ。コーネル大学のフッカー教授の講義にも出てきたが、Walmartは、「InHome Delivery」をワシントンDCでも開始した。このサービスは、午前9時〜午後6時の時間帯に配達員が専用アプリを使って、利用者宅のスマートロツクを開錠。配達員の検温や手袋の着用して留守宅に入り、注文品を冷蔵庫に詰めたり、ガレージの冷蔵庫内に置いたりするもの。冷蔵庫のドアなどを作業後に消毒するなどの処置もほどこしている。着用返品も配達員が持って帰る。返品のために梱包、宛先ラベルの添付などの必要もないのだ。利用料金は年額148ドル(月払いでは19.95ドル)でサブスクリプション「Walmart +」の会費込みで、自動的にウォルマート•プラス会員となる仕組みだ。
Walmartは、対象とするエリア世帯を、現在の600万世帯から3000万世帯に拡大すると言っている。ガレージの冷蔵庫内への宅配が主流になるのだろうが、プライバシーに関する課題を本当にクリアできるのだろうか。
▼この留守宅内への配達サービスはAmazonが先行し、17年にプライム会員向けに「Amazon Key」を提供した。その後、「Key by Amazon」に改称して昨年の4月時点では、米国内5000以上の都市で展開している。ただ、18年に開始した「Amazon In-Car Delivery」は、昨年10月時点で無期限停止にしている。
▼Walmartは、BOPIS(Buy Online Pick-up In Store:ボピス)用の「Pickup Tower」を撤去した。ネット注文した商品を店舗で受け取るこのピックアップタワーは、高さ16フィート(約5m)・幅8フィート(2.4m)、最大300箱(60cm×40cm×40cmまでの箱)の保管が可能だった。顧客は一カ所でピックアップしたい、しかも店の外で受け取りたいという事なのだろう。生鮮品とー緒に他の商品も駐車場で受け取りたいということだ。そこでウォルマートは1500ヵ所に展開した最新設備の撤去を決断したのである。
▼Bossa Nova Robotics社の物流ロボット「オ—卜S」も中止している。こちらは、AIやスキャニングセンサーを搭載した高さ約1.8mのロボットで、売り場の通路を進みながら欠品や在庫減少、陳列場所の違い、値段の間違いなどをチェックしていくもの。1分間に12mの速さで移動し、1時間以内に店舗内を一巡するするもので、棚や陳列物、障害物などをよけながら移動して買い物客など人を察知すると一時停止するもので、約500台まで増やしながら、利用を中止した。
カスタマー・エクスペリエンスを向上するためであれば、高額投資をしたハイテク設備のスクラップも躊躇しないのである。
(2022・02・22)