小売業のDX戦略の適応可能性をさぐる

17日間に渡り、91の国・地域から2877選手が参加した北京冬季オリンピックが20日、祭典の幕を閉じた。中国の人権問題をきっかけに「外交ボイコット」を打ち出した米英などと、中国・ロシアなどの政治的対立も影を落とし、フィギュアスケート女子のカミラ・ワリエワ(ロシア・オリンピック委員会)のドーピング問題も噴出した大会であった。応援を続けたカーリング日本女子は、決勝で英国に敗れて銀メダルの獲得であった。結果、日本選手団のメダル数は金3、銀6、銅9の計18個となり、平昌大会の13個を更新した。

▼驚くのは、大会前に米国のデータ会社、グレースノート社の事前の予測と比べ、銀が1個少ないだけだったことだ。この会社、昨年夏の東京オリンピックでも日本のメダル総数を60個と予想していた。結果は58個であった。選手や種目までは一致してないだろうが精度の高さに驚く。過去の大会データをもとに、時期、大会の格付け、選手のスコアや得点などを解析して導き出すというが、ここには主観ではなく客観的な結論になっているものと思う。予想が当たるのは、AIを始めとするテクノロジーの勝利なのだろうか。

▼DX(Digital Transformation)展開に関し、小売業界にも注目が集まっている。17日のコーネル大学のゴメス教授、フッカー教授とのディスカッションの時にも、修了生から「米国小売業のWalmart、Amazonを始めとする大手企業の動きは業界情報などで知る事は出来る。しかし、米国中堅以下の小売業は、どの分野にDX投資を増やしているのか?」との質問が出た。DX投資は、宅配と決済・レジ周辺だけでは無いはずというものだ。

▼DX活用に関しては、次の項目を中心に個々の企業の置かれているポジションで重点が変わっているようだ。マスコミの報道だけでなく、企業ごとの取組をしっかりと学ぶ必要がある。

  • 店舗オペレーション、物流施設オペレーション
  • ラストマイル、ミドルマイル戦略
  • 需要予測、在庫管理など効率化の追求
  • 個別化マーケティング機能、顧客とのコミュニケーションの場の創造
  • 結果と業務施策(努力度)の関係の可視化、社内外での効果測定結果の共有
  • その他

自社(自店)の個性を活かしつつ、ECとの相乗効果を狙っていくことが最初に在るべきで、Walmartの動きについても、「EDLPというブランドアイデンティティを見失っている」「迅速な配送への法外な投資は、過大評価に基づくものではないか」との意見を述べる研究者もいるのだ。

(2022・02・24)