最近、日本中で魚が獲れなくなったというニュースをよく耳にする。業界に関係する人たちだけでなく、多くの日本人はこの事にもはや慣れきってしまっているようにも感じる。事実、日本の水揚げ量は減少し続けているのだ。1980年代には約1200万トンあったが、ここをピークに減り続け2020年では約400万トンと3分の1程度のなってしまっている。
▼漁業や水産業は、高齢化による後継者不足、水揚げ量の減少により収入減などで大変な一次産業と映る。「今年こそは」と臨んでも水揚げ量の回復を果たすことは出来ない。水産資源そのものが減っているからだ。世界全体で見ても、天然の漁獲量は横ばいだが、養殖が大きく伸び80年代の2倍を超える2億トンにもなっている。養殖が伸び、天然の漁獲量が横ばいなのは理由がある。欧米・オセアニアなどの国々は、SDGsやMSY(最大持続生産量:魚を減らさずに獲り続けられる最大値)を意識して操業しているからだ。実際にはもっと簡単に多く獲ることが出来るのだが、将来の資源量を考え漁獲量を抑えている。減少するばかりの日本の漁業との大きな違いがここにある。
▼少し古いデータだが、08年に世界銀行が2010年と2030年の世界の水揚げ量を予測したものがある。これによるとこの20年間に世界全体では23.6%増加すると予測されている。伸び率の差はあるもののほぼ全ての海域で増加傾向となっている。ところが、一カ所だけ▲9%と減少傾向が出ている海域がある。それが日本の周りの海なのだ。実際に世界全体では増加傾向と予測通り進んでいるのに、日本だけが減少に歯止めが掛からず、しかも、2030年時点での予測値の470万トンを、2015年に469万トンと15年も前倒しで下回っているのだ。
▼魚が減少している理由を①海水温の上昇、②外国船による漁獲、③海の環境変化による魚種の交代、④クジラが増えたことによる食害などが話題に上がる。確かにこれらが影響していないわけではないだろう。ただ、日本では、このケースだけでなく何かが起きた時、「原因の究明」が叫ばれるものの、「想定外だった」「よく分からない」で終わることが少なくない。科学的根拠に基づく資源管理が出来ていないのであろうか。本当の理由が理解されないまま、効果ある対策が打たれないと日本だけ魚が減り続けることになる。食を担うスーパーマーケットにとっても重要な課題だ。
(2022・02・28)