依然続く「内食」指向。「豊かさ」を求める動きも

新型コロナウイルスの感染は、年明けからはオミクロン変異株が急拡大している。スーパーマーケット(SM)企業関係者にとって気になるのが、コロナ禍で増えた家庭での内食・中食の動向になる。どんな変化が起こっているのか把握しておきたい。

▼昨年の10月から年末にかけて第5波の落ち着き時には、抑えられていた外食への意欲が高まり、内食・中食の頻度が減るのという見方があった。しかし、第6波の影響もあり22年内は「内食指向」が続きそうな気配である。生活者は、外食への意向は高いので、外食への支出額は戻っていくとは思われる。ただ、慎重な日本人の行動を考えると、まだまだ内食・中食中心の生活は続くであろう。現に各社の総菜部門は順調に成績を伸ばしている。

▼2年以上「内食」中心の生活が続く中、内食のあり方にも質的変化が起こっている。「時短」を強く求めながらも、 同時に「豊かさ」を追求したいという気持ちが表れている。内食比率が高まるほど、買い物、食材の選択、調理方法の工夫などして時短・簡便化を進めなければ、女性たちは自分時間が取れなくなってしまう。「時短」が、これまで以上に求められるようになるはずだ。一方、家族と向き合う時間が増え、家族の健康や安全、食卓を囲む大切さを強く意識するようになっている。「食育に関する意識調査報告書」(農林水産省:21年3月発表)によると、「今後1年間にどのようなことを食育として実践したいと思うか」の問いに対して、健康・栄養面のほかに食の豊かさや家族とのつながりを重視する意見が目立つ回答が上位を占めている。

▼業界各紙が直近号で「冷凍食品」に関する特集を組んでいる。かつては「時短」食材だった冷凍食品やレトルト食品が高品質化・多様化したことで利用する人が増えているのだ。生活者は、食の満足度を上げたいのだ。コロナ禍で「生活充足」消費が伸びていたが、これからは「生活充実」消費が必要になるはずだ。外食機会の減少で食の満足度は落ちているかも知れない。SMにとって、内食の満足度を上げる品揃えや商品の高付加価値化が重要な局面といえる。従来のトレンドに戻った時に、外食への反動にSM大きな後れを取ることになってしまう。その時までに、どれだけ魅力的な食材や食品、惣菜などを用意し、生活提案で顧客の心をつかめるかが重要だ。SMは、家庭内食需要増に甘えていることはできない。

(2020・03・05)