ネットスーパーの先駆けは、英国のテスコになるのか、テスコ・ドットコム事業がスタートしたのは1995年である。英国第一のスーパーマーケットが、オンラインで受注して、宅配するビジネスを展開し始めた。テスコは4つの店舗フォーマットを英国全土に展開、空白地域は皆無というほどの寡占状態になった。これらの隙間を埋め尽くそうと事業展開したことになる。日本では、三重県鈴鹿市のスーパーサンシ(株)が1982年、カタログと電話注文による宅配サービス「フレッシュシステムズ」をスタートさせ、船井総合研究所などと協業して、フランチャイズビジネスとして展開した。「センター型宅配システム」で18社がフランチャイジーとして参加した。ヤオコーもそのひとつで1985年に(株)フレッシュヤオコーを設立したのだが、成功を収められずに2009年に撤退した。
▼フレッシュシステムズは、その後、運営方法を「店舗型宅配システム」に変更し、全国のスーパーマーケット約50社に提供した。スーパーサンシの宅配サービス事業は、改善を重ね、2000年に単年度黒字を出し、2005年には黒字体制が確立された。インターネットなどデジタル技術の活用が大きいと思える。ただし、ネットスーパー事業は、現在でも儲けを出すことは難しいらしく、事業として黒字転換を果たしている企業は少ないようだ。
▼そのような中で、バローホールディングスのネットスーパー事業は黒字化に成功していると聞く。これまで、個人宅へ無料での当日配達では採算が合わないと慎重な姿勢をとっていたが、2019年7月に方針を転換し、「ainoma(アイノマ)」と名付けた独自モデルのネットスーパーを始めた。特徴は、荷物の受け取り方法を「店舗」、配送料1回当たり450~550円(店舗により異なる)の「宅配」、「職場」の3つを用意している。法人施設に専用ラックを設置、温度管理機能を備えた「お客様別ボックス」を届けるなどフルフィルメント機能の強化に継続的に取り組んでいる。新聞配達会社や移動販売会社とも協業し物流インフラとして機能することも目指している。一方、都市部ではアマゾンジャパンとの協業に踏み切った。注文を受けた商品を店頭在庫からピッキングして最短2時間で届けるというもの。実店舗の売上を損なうことなく、商圏拡大につながり客数も増えているという。
▼フレッシュヤオコー事業に関わった者として言えるのは、経費構造がスーパーマーケットとは異なる事だ。店舗は、土地、建物、人件費という固定費が多いが、ネットスーパーのそれは、受注システムコスト、ピッキングコスト、デリバリーコストになる。固定費は少しでもたくさん売ることでカバーしやすいが、変動費は発生の段階でのコントロールを必要とする。変動費を管理することは、デジタル活用を上手くすることに似ている。武器は、改善や改革の「スピード」になるからだ。
(2022・03・18)