どこまで広がるのだろう「冷凍食品」・・・

近頃、「冷凍食品」が業界誌で特集記事として、頻度高く採り上げられている。家庭用冷凍食品の国内生産額は2010年以降、年平均3%台で伸びてきたが、20年は18.5%増と跳ね上がっている。その反動もなく21年も勢いは衰えず、更に今年に入っても伸び続けているのだ。コロナ禍で外出自粛や自宅での食事機会が増えた結果、解凍・加熱するだけで食べられる上に、長期保存もできる冷凍食品はうってつけのものになっているのだろう。

▼総務省の「家計調査報告書」でも、単身世帯家庭の冷凍食品の年間支出額は、20年が35.6%増、21年が94.6%増と驚異的な伸びを見せている。若い人たちだけでなく1人暮らし高齢者が利用を始めた結果だ。更に、これまでの利用主体であった2人以上世帯の利用も増え、支出額はこの2年で1.2倍に増加している。なかでも勤労者世帯の支出額は、21年には1万1222円に達している。利用シーンも、食事のおかず、酒のつまみ、デザートなどへ広がり、唐揚げ、ギョーザ、グラタン、ピザなどの調理品からミールキット、冷凍野菜や鮮魚などの素材系、冷凍フルーツに至るまでの売上増が見られる。

▼冷凍食品の需要増の裏側には、冷凍技術、特に急速冷凍技術の向上で格段に美味しくなったことがある。冷凍食品は、通常はマイナス30℃以下の冷気を吹きかけて急速凍結されるのだが、この技術も進歩を遂げている。更に、TV番組でよく採り上げられているのでご覧になった方も多いと思うが、冷やされたアルコールに浸して超急速冷凍させる「液体凍結」、空気凍結機の庫内に磁場を発生させて水分の膨張を抑える「CAS凍結」など新しい技術が汎用化されてもいるのだ。冷凍による味の劣化が起きないのなら、鮮魚も刺身も冷凍で提供する方が適しているとも言える。これまでの「鮮度」の意味、価値観が変化するかも知れない。

▼顧客ニーズの高まりと商品の広がりが大きな流れになっているのだが、販売する側の課題もある。それは、スーパーマーケットだけでなく、コンビニエンススト、ドラッグストアがこぞって冷凍食品を強化する動きが一気に強まって来ていることだ。しかも、冷凍食品の無人ストアや駅構内に冷凍食品の自動販売機の設置を始めるなど競争激化が予想される。「お刺身」をドラッグストアで購入するケースなど生まれるかもしれない。また、冷凍食品は、長期保存ができてるので、店舗への来店頻度が減少するかもしれない。衝動買いを誘うにも、来店頻度が減ればそれも減る。その上、チルド商品に比べて改廃のスピードが遅いという欠点もある。お客を飽きさせないようにする事が難しくなる。

共働き、単身世帯、高齢世帯が増加する中で、調理の手間が省けて買い置きができ、おいしい冷凍食品の利便性を知った消費者は、コロナ禍が収束しても利用を増やすだろう。ただ、冷凍食品が増えれば増えるほど、「リアル店舗は生鮮3品、そして惣菜が重要になる」はずだ。自社開発の冷凍食品を多く持つ、米国の Trader Joe’s の売場づくりが注目されそうだ。

(2022・03・27)