日本経済新聞朝刊に「経済教室」という誌面がある。難しい記事が掲載されている面なのだが、そこに「私見卓見」というコーナーがある。読者からの投稿や寄稿を受付て、読者の参考になる意見を紹介するコーナーだ。ここで、正月明け直ぐの時に、少し驚きの名前を見つけた。若い人たちには馴染みはないだろうが、「タッチ」「青春」などのヒット曲で知られる「岩崎良美」の名前を見つけたのだ。内容は「学び直し」と「これからの夢」を寄稿したものだ。
▼芸能界生活42周年を迎えるとあり、年齢を調べたら60歳とあった。コロナ禍で公演のキャンセルが相次いだ時、これからどう生きていこうかと思い悩んだ。そして、コロナの感染が収まっても、以前のような仕事は難しいと考えている時、高校卒でも大学院に入れることを知ったという。それから、卒業した堀越高校に行き成績表を取り寄せ、期限ギリギリに願書を提出、面接試験に合格して昨年4月から桜美林大学の大学院で経営学を学んでいるという。高校を卒業して以来の勉強はつらいが、学び直しの意義も実感しているとも書かれていた。
▼授業体験の一端も書かれている。「ビジネスプランを作る実践学習では、アイデアは思いつくけれど言葉や図表を使って形にできない。パソコンでスライド資料を作るなど生まれて初めての経験で、睡眠時間が1日2時間の時もあった」「60歳にしてゲーム理論や企業再生を学ぶうちに、世の中の見方が変わった。大企業も苦境に陥ることはあるが、苦境を乗り越えるすべもある」「グループ学習では中国人留学生と助け合って課題をこなし、チームプレーの楽しさに気づいた」などとあり、コーネル大学RMPジャパンのカリキュラムと重なり、読む側もワクワクしてくる内容であった。きっと、彼女も世の中の見方がかわったと思う。
▼「リスキリング」や「リカレント教育」との言葉を多く目にする。デジタルや環境問題などへの革新に対応出来る人材を育成し、生産性の向上を実現して豊かになろうという大きな動きが始まっている。各企業も使命感をもって取り組み始めているのだが、重要なのは、学ぶ側の喜びが、本当の意味で実感できる仕組みがあるのかという事になる。会社側、ひいては社会の要請と学ぶ側のスキルアップへの思いが合致し、学ぶ事で人生は豊かになり、経済の底上げもかなうとの道筋をはっきりつけられるとうれしい。
(2022・03・30)