それ、イメージだけで決めていませんか?

野村総合研究所が実施した「2030年冬季五輪の札幌への招致の是非」に関するインターネットの調査結果が出ていた。北海道よりも日本の他の地域の方が、札幌五輪の開催を支持する傾向が強いという。北海道は「ぜひ、開催してほしい」「できれば開催してほしい」が計28%に対し、「絶対、開催してほしくない」「できれば開催してほしくない」が計38%と反対派が多かったのに対し、全国では開催支持派38%、反対派27%となり、北海道以外はどの地域も開催支持派が反対派を10%程度は上回っていたのだ。

▼この調査、パラリンピックの開幕前の2月25日に実施されたものになるが、とても意外な結果だと感じる。一般的には、五輪開催は開催コスト以上のリターンをもたらす。しかも、交通アクセスや宿泊、集客施設など地域全体が刷新されると考えられている。札幌は世界有数のウインターリゾート地に発展する可能性がある。反面、市の開催コスト以外に国の支援も必要になるはずだ。他の地域にとって、開催地だけに税金や民間投資が集まることに関して単純に賛成できるのだろうかと考える。

▼近頃の施策など曖昧なイメージだけで賛成、反対が決められることが多いように思えてならない。何ごとも、国も含めて説明が決定的に不足しているのだと思う。具体的な未来の姿をしっかり提示する必要があり、日本全体としてどんな意味を持つのかを説明して議論することが大切なポイントなのだが、イメージだけで是非を論じる傾向がありはしないかと思う。

4月から施行された「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」についても、生活が変わる事ばかりが宣伝される。しかも、これまで無料で受け取れていたプラスチックのスプーンや、ホテルのアメニティなど12品目が有料化されることが中心だ。

▼海洋プラスチック問題や国内の資源循環の必要性の高まりなどの背景に関するものは少ない。海洋生物の生態系や私たちの生活にも悪影響を及ぼすこと。国内でごみ扱いしていたプラスチックを資源としてアジア諸国に輸出してものが、2017年以降、中国、タイなどの東南アジア諸国で輸入規制を強化しており、国内で資源を循環させる必要性が高まっていることなどを伝えて、法律の背景を考え、行動を変化させることに及ばない。メーカーが使用済み詰め替えパックの分別回収を協働して推進する取組みや、ソーセージの包装を巾着型からより長方形に変えるなどの動きを、小売業は、消費者と一緒になって後押しするなどし、プラスチック資源はどれほど循環されるのかを注視する役割もあると思うのだが・・・。

(2022・04・18)