継続性ある学びの機会の創出を・・・

リスキング(Reskilling)については、企業のDX(Digital Transformation)推進の中核を成す取組みと位置付けられることが多い。勿論、先行しているのは海外企業である。米国では、コロナ禍の影響で都市がロックダウンされ、あらゆる業種の企業が従業員の解雇やレイオフを余儀なくされた。仕事にあぶれ手持無沙汰で過ごす間、人生を振り返り、「一度きりの人生を、納得のいく仕事をして全うしたい」と考えるようになった人が増えた。結果、米経済が持ち直し、企業が次々と再雇用を申し出ても、それに応じない労働者が多く存在したばかりか、就業し続けていた従業員さえも会社を去っていくケースが急増したのだ。ここで生まれたのがリスキリングを通じた人材獲得競争である。

▼米国小売業の様子をWalmartの事例を見てみよう。他社に先駆けていち早くリスキリングへの投資を行った背景には、「世界経済フォーラム」において「第四次産業革命の理解」が主要テーマとして取り上げられ、その中でリスキリングの重要性が提唱されたことがあったからと思われる。世界規模で活動するグローバル企業にとっては、世界経済の課題が自社の経営課題と直結しているのである。Walmartは、かねてより社内で大学の学位などが取得できるプログラムを提供していた。時間給で働く従業員を対象に学費全額を負担するもので、米国の高額な学費を肩代わりしてもらえるのであれば、その会社で働くに十分な動機と成り得るからである。

▼2016年の時点ですでに、自社従業員の3分の1はDXによりいずれ必要なくなる職種に就いていると概算、雇用を維持するにはリスキリングが不可欠であると考えていたようである。プログラムの目指す方向性が「生涯を通じて学び続けるプログラム」という表現になっている。これまでの企業内教育は、目の前にある課題に対処することを主な目的としていた。その解決力がつけば一旦終了するのが主流であった。リスキリングは時代の変化に対応しながら、長い時間をかけて継続的に学び続けるスタイルに変化してきているのだ。

▼コロナ禍で社員に副業を解禁する企業が増加し、それに伴い働く人が自らの市場価値を知る機会も増えている。個人がライフキャリアを所属企業に一任する時代は終わりを告げようとしているらしい。企業が優秀な人材をつなぎ留めておくには、学び続けることができる環境を提供し続けることが求められるであろう。最先端の各種技術が瞬く間に陳腐化する時代、一度学んで終わりではなく、長期にわたり継続的に学習する風土づくりが欠かせないはずだ。

(2022・04・23)