米国の小売市場は、物価上昇や人手不足、サプライチェーンの課題がある中、21年の米国小売市場は4兆5830億ドルに達した。既に記憶が遠のきつつあるが、30年前の米国小売市場は日本の小売市場と大きな差はなかった。しかし、日本市場がほぼ横ばいで推移しているのに対し米国市場は右肩上がりで成長した。
▼既述したが1月に開催された「NRF2022」の会場で発信されていたキーワードは、「リーダシップ」、「メタバース」、「サステナビリティ」、「ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョンのDEI」、そして「人材」だと大島 誠(Panasonic・コーネル大学RMPジャパン講師)氏がレポートしてくれた。19年には利用客の25%がピックアップ・配達を利用していたが、パンデミック後の21年には54%が利用するようになったとあり、米国のグロサリー売上のうちピックアップと配送は19年8月の段階では2%だったが、パンデミックの始まった頃にはピックアップ4%、配達2.5%に増加して、その後は8~9%程度で推移しているという。
▼このよう状況下で、食料品ではないが「ワークマン」は、5年以内に電子商取引(EC)で宅配を全廃し、店頭受け取りのみにするという。梱包・発送作業が不要でコストが大幅に下がり、来店によるついで買いも見込める。現状でも送料がかからない店頭受け取りの比率は高く、顧客にも受け入れられると判断した。速く安くの配達競争に背を向け、店舗網を生かした「宅配なきEC」に踏み込むと日経新聞が報じていた。(4月27日号朝刊)「全国に500店以上あれば店頭受け取りで問題はない。不満の声はほとんどない」と土屋哲雄専務はコメントしている。既にある約940店舗も強みだろう。
▼飲食料品のような「すぐに必要」という商材ではないので、宅配の場合の送料負担(売上1万円未満の場合)を嫌って、店頭受け取りを選ぶ顧客が現状でも約8割に達しているという。店舗の9割以上をフランチャイズチェーン(FC)が占めるワークマンは、FCの経営が安定することが成長に欠かせないはずだ。FCの売上増を実現し、ついで買いも期待できるのも理由になるのかも知れない。ECの返品率は5%で、店舗で販売した場合の10倍に達するともいう。日本国内の宅配便の取扱数は年間50億個に迫り、運び手が足りない「宅配クライシス」が深刻化している。メルカリが数日遅い配達でよければ送料が安い「ゆっくり宅配」を検討するといった動きも出て来ているらしい。コスト削減と効果を考慮しての戦略法が増えそうだ。わが社ではどうするべきかをここでも求められている。
(2022・05・01)