総務省は、2021年度の「家計調査」の結果を発表した。昨年度の2人以上世帯の1カ月平均の消費支出は28万935円であった。物価変動を除く実質で前年度比1.6%増と4年ぶりの増加であったが、コロナ渦の影響前の19年度に届かなかった。20年度の消費支出は前年に比べ4.9%減であったが、昨年は増加に転じたものの、その落ち込みを補えていなかった。米国と比べ力強さを欠くうえ、インフレが経済回復の行方を見えにくくしている。
▼米国の流通業の業績はいたって好調のようだ。21年の米国小売業の販売総額は3兆8178億ドル(対前年比10.5%増)という。20年は、コロナ禍での内食需要の高まりなどで対前年比6.3%増となっていたが、それよりも伸び率は大きくなっている。われわれの業界であるスーパーマーケット(SM)は、日本と同様に20年の“コロナ特需”からやや落ち着きを見せているが、21年の販売額は20年を下回ったものの、コロナ禍以前の水準は大きく上回っている。米国の購買パワーの強さに驚くばかりだ。
▼ウォルマートの業績は、米国内事業がとくに堅調に推移している。EC売上高を11.0%増と伸長させながら、既存店売上高も6.4%増とするなど引き続き好調である。OMOで強みを発揮し、ラストマイル施策でも貢献度を挙げている。
アマゾンも対前年比を2桁のペース成長させ続けている。「デジタル化」や「スピード」を重視する消費者ニーズ対応が、適切であり支持を集めていると思われる。「Amazon Go」や「Amazon Fresh Store」を積極的出店する反面、「Amazon Books」、「Amazon 4-Star」、ポップアップストアをすべて閉鎖する方針である。Whole Foods Marketでも、ダークストア開設や「Just Walk Out)」を導入するなどの施策に積極的だ。
▼コーネル大学RMPジャパンでイサカ市を訪問する際、店舗見学を実施するHannaford Brothers Companyの持株会社であるアホールド・デレーズ(Ahold Delhaize)は、オムニチャネル化を推進。21年1月にFresh Directの株式の80%を取得して、傘下のGIANT CompanyでEC向けフルフィルメントセンターを稼働させている。21年度のEC売上高を38億1400万ドル(68.9%増)と大幅に伸ばしている(Ahold全体3.1%増・19年比19.0%増)。106店舗を展開するWegmansは、変わらずPB商品や惣菜などに加え高い店舗力によって強さを維持している(3.8%増・19年比14.2%増)。インスタカート(Instacart)と提携した宅配サービスには対応しているものの、自社でネットスーパーに参入する動きはみられない。Trader Joe’sは、ECやネットスーパーの需要が急増したコロナ禍でも店舗のみの事業モデルを貫いている(2.1%増・19年比8.1%増)。
米国の強さは、GAFAを代表とするITプラットフォーマーの躍進がある。米国では新たな産業が生まれ、これまでになかった需要を創造し、新たな雇用を生み出したことにある。それに対応できている小売業はやはり強いのだ。
(2022・05・12)