『Marketing 5.0』日本語版が出版された・・・・

インターネット上では、昨年の早い時期からから話題になっていたが、『Marketing 5.0:Technology For Humanity』の日本語版が出版された。フィリップ・コトラー他2名による共著である。なぜ、話題になっていたかは、マーケティングの世界でも、デジタル化により人々はさまざまなマイナス面とプラス面に直面しジレンマに陥っていること、従来できなかったさまざまなことがテクノロジーの成熟により可能になっていることでの進化が求められているからである。

▼コトラーのマーケティング理論は、これまで時代の流れに合わせて、アップデートされてきた。すでにご承知のことと思うが、「マーケティング1.0」は、1900年代から1960年代にかけて育まれた、製品に焦点を当てるマーケティング戦略のことになる。モノの種類が少なく、顧客側に選択肢があまりなかったので、4P(Product、Price、Place、Promotion)などを用いて、企業側の目線で戦略が立てられていた。1970年代頃になると、技術発展と共にモノの種類が著しく増え、市場での競争は激しくなり「作って売るだけ」から顧客ニーズを汲み取ることが重要になった。「マーケティング2.0」の考え方である消費者志向が背景になってSTP分析(Segmentation、Targeting、Positioning)のようなフレームワークが生まれたことになる。

▼「マーケティング3.0」は、商品・サービスに付随する“価値”を重視したマーケティング戦略になる。1990年代に入るとインターネットの普及により、企業側の一方的な情報を受け取るしかなかった消費者が、消費者対企業、消費者同士といった、双方向のコミュニケーションを取ることが可能になった。結果、「社会をより良くできるのか」といった、社会的価値を求めるようになった。そして、「マーケティング4.0」の時代になった。“自己実現”を達成させるマーケティング戦略といわれ、マズローの「欲求5段階説」をベースに考えられた概念で、コトラーは、すでに自己実現欲求以外の欲求は満たされていると考え、これからは自己実現欲求を満たすマーケティングを行うことが重要と説いている。顧客が製品・サービスを購入するまでの流れを理解するために、カスタマージャーニーという考え方があるが、コトラーは、ここで5A(Aware、Appeal、Ask、Act、Advocate)理論を提唱している。現代のマーケティングは、推奨までつなげることを意識して、戦略を立てることが求められるのだ。

▼そして「マーケティング4.0」になるわけだが、3.0と4.0の延長線上に位置するものになる。副題に「人間のためのテクノロジー」とあるようにテクノロジーに光を当てている。新しいテクノロジーは、マーケティングの在り方を一変させる可能性を秘めているというものだ。

われわれ小売業界も、これらにどのように向き合ったらよいのかについて真正面から論じているように思える。

(2022・05・19)