米国の4月の小売売上高(季節調整済み)は6777億ドル(約88兆円)で、前月から0.9%増えたとの報道があった。上方修正された前月(1.4%増)に比べて伸びは鈍化したが4カ月連続増加を達成している。米国では、歴史的な高インフレ下にあるにもかかわらず消費は堅調さを維持している。インフレによる家計の圧迫がまだ消費に大きな影響を与えていないようだ。
▼ただ、Walmartが22年2~4月期決算を17日に発表した。売上高は1415億6900万ドル(2.4%増)、既存店売上高も3%増えている。食料品のPB商品などが好調の様子。傘下の「サムズクラブ」も好調で既存店売上高も10.2%増えており、グループ全体を牽引している。ECの売上は1%増にとどまった。ただ、営業利益は53億ドル(23%減)であった。燃料価格高騰、新型コロナウイルスの「オミクロン型」の感染拡大に備えた一時的な採用増の反動で人件費が嵩んだとしている。アウトドア用品などの売上げが気温低下で伸び悩んだ上に、過剰在庫による値下げも収益を押し下げた模様である。そして、純利益が20億5400万ドルで、これは前年同期比24.8%も落としている。
▼ターゲットもウォルマート同様に減益決算を発表している。売上高は251億7000万ドル(4%増)、既存店売上高は3.3%増えている。食品・飲料品などは堅調だったが、春物衣料が振るわなかったようだ。営業利益は13億4600万ドル(43%減)で、家電や衣料品、スポーツ用品などの販売が不振で、処分のためのセールが利益を押し下げたとしている。長期化する物流混乱での輸送費の増加や人件費高騰も響いているようだ。純利益も10億900万ドル(約1300億円)で前年同期比52%減である。物流の混乱に伴う輸送費の上昇圧力や商品調達への影響は、来年初めまで続くとの予測も出している。
▼低価格戦略で「インフレ下での強さ」を自負してきたウォルマートの対応が注目されている。日経新聞は、決算説明会でダグ・マクミロン最高経営責任者(CEO)は、「米国のインフレ率がこれほど高まり、食品と一般雑貨の両方で(物価高が)早く進むのは異例だ。コスト増に対応した価格転嫁をしていく」と述べたと報じている。他社と比べた価格面での競争的優位を実現してきたウォルマートだが、今回は想定を超える収益圧迫に方針転換を迫られているようだ。ただ、インフレが急進する中で、低所得者層を中心に節約志向は強まっているようで、牛乳は、ハーフガロン(約2リットル)サイズが、加工食品なら低価格のPBを選ぶといった傾向が出ているらしい。値上げ幅やどういった商品を対象とするか注目したい。
「これは米国小売業のことだ」と言い切れない状況が、われわれにも迫っていると考え、準備する必要があると思う。
(2022・05・20)