新しい生活に向けての動きが・・・

TV中継されるスポーツ番組を見ると、観戦席が埋まっている。2年以上に渡った新型コロナパンデミックも、ようやくその出口が見えてきたように感じる。歴史的に見ても、人類を悩ませてきた感染症の多くは、感染爆発を繰り返しながらほぼ数年で収束して来ている。日本における人的被害は他国に比べても低く抑えられているのは、衛生面や医療面での日本人の意識の高さにあるのだろうか。ただ基本は、ワクチン接種と治療薬が収束の決め手となるのであろうから、これからも変異株の発生などの要素は残るだろうが、新しい生活に向けての動きが本格化すると思われる。

▼ただし、パンデミック前の元の状態が戻るかというと極めて不確定である。世界は、コロナ禍意外に、気候変動をはじめとした不安要素が多すぎる。ロシアのウクライナ侵攻をはじめとする国際紛争、ともなう国際情勢の流動化、資源価格の高騰と供給不安、金融不安や国際物流の混乱などがあり、企業活動や消費に直接的な影響を与えているからである。これまで規定していた国際秩序が動揺し、経済安全保障の重要性が意識されるようになっている。

▼この変化は、特に日本にとっては厳しいように感じる。このコロナ禍が日本社会の脆弱さをあぶり出したからである。欧米諸国に比べ、日本社会の復元カは弱く、危機に対応する日本の組織と仕組みが適合していないことを物語る。日本の組織は、時間をかけたての調整活動とそれまでの実行してきた事項を修正することを得意としてきた。日本流の適応行動は、外部からの突発的危機にどんなにか脆いものかを示したといえる。企業活動含め、これからの時代は、リスクが高く予測することが難しく、しかも不連続な環境変化を前提とした発想と適応行動が必要なのである。前例が無いから出来ないは、もう止めなくてはいけない。

▼19年農林水産省による農業•食品関連産業の経済計算によると、日本の農業•食品関連産業(農業、食品製造業、流通業、外食産業)の国内生産額は、118.5兆円で、日本国内の全経済活動の11.3%を占めている。これを2000年からの20年間の推移でみると、国全体の経済活動9.8%増加に対して、農業・食品関連産業は4.7%の増加という低い伸びに留まっているのだ。問題の根源は日本の人口減少と高齢化であるとしても、それに受け身で対応するのでなく、前向きにかつ創造的に対応していく知恵と工夫が必要である。明らかにじり貧の傾向にある市場をいかに活性化し成長させていくかが問われている。

デジタル化だけでは不十分と思うのだが、どうだろう。

(2022・05・31)