再編の機運が高まり寡占化が進行中・・・

日本リテイリングセンターが毎年秋に集計している年商50億円以上の小売企業統計を改めて見た。スーパーマーケット(SM)は、年商50億円以上の企業が395社あり、その平均保有店舗数は37店しかない。ドラッグストアの平均283店と比較すれば上位集中度の違いは明白だ。また、年商50億円以上の企業の総店数で、日本の人口を割り算した1店当たり人口をみると、SMは8800人にしかならない。GMSの食品売場と生活協同組合の店舗はSMと同じ機能とすると7390人に1店舗あることになる。事業として成立するに必要な商圏人口の3分の1に満たないのだ。しかも、SM以外の業態でも同じオーバーストア状況で、1店当たりの必要商圏人口を大きく割り込んでいるのだ。競争の激化は避けられず再編の機運は高まるに違いない。

▼コロナ禍の影響で恩恵を受けた業態、逆に厳しい環境下に置かれた業態と、業績の明暗が大きく分かれているのだが、どの業態でも大手企業を軸に再編の機運が高まり寡占化が進行している。原材料や電気代の高騰によるコスト負担増もさらなる引き金となるはずだ。SMも特需が続き見えづらくなっていたが、長年経営課題として抱えてきた、人口減少、競争激化といった環境の変化はいっそう進んでいく。SM業界は他業態に比べて寡占化がそれほど進んでこなかったが、今後は上位への集中度が高まる可能性がある。

▼昨年、小売業界で最も注目を集めた再編は、エイチ・ツー・オー リテイリング(H2O)とオーケーによる、関西スーパーマーケット争奪戦になる。関西スーパーは21年8月、H2Oとの経営統合を発表したが、株式の約8%を保有していたオーケーがこれに反対、TOBによる完全子会社化の意思を表明した。結局、法廷闘争にまで発展、最高裁判所がオーケーの抗告を棄却し、今年2月、関西スーパーは関西フードマーケットに商号変更し、事業を承継させた新生関西スーパーマーケット、イズミヤ、阪急オアシスの3社を傘下に抱える中間持ち株会社となったというものだ。

▼この一連の騒動の舞台裏を、日経新聞が関係者への独自の密着取材によりまとめ上げた『関西スーパー争奪 ドキュメント 混迷の200日』(日本経済新聞社=著(日経BP、日本経済新聞出版刊/1600円〈本体価格〉)が刊行されている。3社の関係性や思惑を明らかにするとともに、株主総会の運営方法などの問題点も明らかにしている。企業運営に関しても参考になることが多い一冊といえる。

ただ、個人的には、2章「スーパーの教科書」を読み、当時の北野祐次社長はじめ多くの方々から、関西スーパーで確立された経営ノウハウを惜しげもなく開示頂き、学ばせて頂いた30年ほど前の日々を思い出さずにはいられなかった。改めての感謝を申し上げる次第である。

(2022・06・09)