息づかいや思いを届けるマーケティングへ・・・

日経MJ(6月8日)に『2022年上期ヒット商品番付』が発表されていた。日経MJが消費動向や世相を踏まえ、売れ行き、開発の着眼点、産業構造や生活者心理に与えた影響などを総合的に判断して作成しているもので、大相撲の番付表の形で発表するものだ。

▼東の横綱は、「値上げ消費」であった。食品や日用品、ガソリンや電気料金など幅広い分野で値上げラッシュが続いている中、価格据え置きを宣言したイオンはPB食品の主要品目で前年比を2割以上伸ばしているとある。西友も食品・日用品分野のPB商品の構成比は20%に上昇したとある。

一方、西の横綱は「リベンジ旅行」である。2年間の自粛生活の反動であろう、コロナ渦で見送っていた旅行に踏み切る人が増加している。JTBはゴールデンウィーク期間中の国内旅行者は昨年に比べ7割増え1600万人と推計している。ハワイ便の予約も前年比9倍にも伸びているようだ。オリエンタルランドも1~3月期は前年2.6倍の売上であるという。

▼コロナ渦の中で生まれた新しい価値観が根付きつつあるようだ。生活にオンラインが浸透し、次世代型のテクノロジーを身近に体験出来るようになってきている。「ノンアル生活」「メタバース」「次世代自動販売機」「平成ギャル文化」「電動キックボード」「ヤクルト1000」「プライベートサウナ」「Miles」「0秒チキンラーメン」などが番付けられていた。三賞では、ニチレイフーズ「冷やし中華」が技能賞をうけていた。冷やし中華は麺をゆでたり、冷水で締めたりして手間がかかる料理。氷は電子レンジのマイクロ波の影響を受けにくい特徴に着目、約5年をかけて完成させたという。レンジで温めても麺の上に氷が残り、ひんやりと仕上がるように計算を重ねたというので試食してみた。混ぜるとすぐに溶け、ちょうど食べごろになるはずだが、少し難儀した。特許出願済で、販売は好調で「計画比2割増」とニチレイフーズは言っている。

▼それにしてもヒット商品の性格が変化している。消費者アンケートからは決して生まれないような商品がヒットしているように思える。マーケットインでの商品化にもデメリットはある。顧客のニーズを満たした商品開発を行うため、斬新で目新しいようなヒット商品は生まれ難い。また、顧客のニーズを重視するので、自社の商品・サービスの軸がブレやすいなどのデメリットがある。

消費者の意見に頼った差別化ではなく、作り手自身の思いを形にした「プロダクトアウト」が商品開発の鍵を握っているようだ。リアル店舗も売るひとの息づかいや思いを届けるマーケティングが重要になってきた。

(2022・06・10)