コンビニ業界の市場規模は10兆8000億円、店舗数約5万6000店(21年:日本フランチャイズチェーン協会)とある。この数年間は、微増が続いたが、コロナ渦で20年に初のマイナス成長を記録した。店舗数も24時間営業問題を受け、初めての純減を経験している。コロナの影響で悪くなったような報道があるが、それ以前からマーケットは縮小しているのだ。ビジネスモデルの転換が必要と新規ビジネスの展開を各社が加速させている。
▼宅配サービスをみてみたい。「セブン-イレブン」は、即時配送するサービス「7NOW」の展開エリアを一気に拡大させる予定だ。このサービスは、北海道の一部エリアで実証実験を開始(2017年)し、その後、広島・東京にもエリアを広げ検証を続けてきた店舗商品を最短30分で配送するサービスだ。23年2月期には5000店、25年2月期には全国でのサービス展開をめざす方針とある。「店舗」「7NOW」のどちらの売上でも、加盟店側は同程度の売上・利益を確保できるモデルを確立済みと言うことで、既存店売上高を押し上げる可能性のある施策とされている。
▼「ローソン」は、デリバリー事業者との提携を進めてサービスを拡大している。「Uber Eats」や「Wolt」など5社と提携し、店舗商品を配送するサービスを45都道府県3232店(22年5月)まで拡大した。その上で、店内厨房の機能を生かしたデリバリー専用メニューを宅配する「ゴーストレストラン」事業に参入した。3年後には全国1000店まで実施店を拡大する方針を打ちだした。
「ファミリーマート」は、一部のエリアでフードデリバリーサービスとの提携により、店舗商品の宅配サービスに対応してはいるが、現段階では「店舗に来てもらう」ことを重視した施策に力を注ぐ考えのようだ。新しい3カ年中期経営計画の中で、「CVS事業の基盤を活用した新規ビジネス」を挙げ、“店舗のメディア化”と広告モデルの構築を訴えている。「ファミペイ」と連携させた自社メディアと、顧客データの組み合わせで独自の広告モデルを開発し、収益化をめざすとある。
▼コンビニ業界として最も重要な機能は「便利」「おいしい」であろう。このアップデートが進みそうだ。「スピード感」「簡単・便利」「高品質」「品揃えの強化」「独自化」などの追求となろう。そして、加速するであろうと思われるのがデジタル化だ。「スマホによって顧客とデジタルで“つながる”仕組み」を築くというものになる。コロナ渦で急速に進んだ米国のデジタル化にあるように、ネットとリアルの顧客データをもとに、商品・サービスの提案力を高めるほか、個々の消費者に合ったデジタル広告サービスの展開にまで事業領域を広げるなどの新しい成長施策が展開されるに違いない。
(2022・06・19)