コンビニエンスストア(CVS)業界に明るい兆しが見え始めているようだ。3月はセブンイレブン・ジャパン、ファミリーマート、ローソン、ミニストップの4社が既存店昨年比をクリアし、4月も大手3社はクリアした。CSV業界全体でも4月度は全店昨年比2.6%増、既存店昨年比でも2.3%増となっている。
▼このCVS業界だが、再成長に向けた方針が発表されている。施策の方向性は大きく2つあり、ひとつは昨日報告した配達サービスになる。もう一つが、店の利用を増やすことだ。それを実現するための、買い上げ点数アップを狙ったワンストップの品揃え強化、客数増のための仕掛けづくりになる。コロナ渦で、近くの店で買い物を済ます傾向が強まっていることから、冷凍食品、野菜、大容量商品、日用品など、ニーズが高い商品群の品揃強化の方向だ。そして、来店してもらうための動機づくりにも力を注ぐ。それが、商品フェア、看板商品の開発、できたて商品の拡充などになる。
▼各社の経営戦略だが、「セブンイレブン」は、従来からの変化対応を貫く従来の経営戦略を迷わずに突き進む構えだ。出店戦略も「今はコロナの影響を見極めている段階。この先また出店を拡大する」と明言している。
「ファミリーマート」は、CVSのプラットフォームとしての可能性にフォーカスするもので、「ファミペイ」を核とした金融事業、店舗での広告を配信するメディア事業など新たな収益を上げ、コンビニ事業への投資に回すことで成長のサイクルを回していく構想だ。
「ローソン」もコンビニ事業への投資還元という点で共通する。連結企業の新規株式公開を含む資本政策で、中国事業や成城石井などの成長分野を含める「グループ全体の資本政策」を検討している。そこで得た収益をコンビニ事業に回していきたい考えのようだ。この「ローソン」は、今期からエリアカンパニー制度を導入した。開発・営業・商品の各部門をエリアに権限委譲することで、よりきめ細かな地域密着経営を推進する動きになる。
「ミニストップ」は、気温や天候による消費者の動きの変化に対応をし、廃棄ロスや人件費などを本部と加盟店双方で負担するシステムへの移行を進め、積極的な発注で売り上げ増につなげる。また、デジタル戦略を組み合わせた新たなビジネスモデルの構築を目指すとある。
「セコマ」は、人口減少を見据え、北海道ブランドの商品を道内外に販売。それと直営店が8割の優位性を生かし、物流網に自社以外の商品を載せて運ぶことで積載効率を高めつつ、新たな収益獲得を狙う。コンビニ事業に加え、製造小売りの外販と物流サービスに活路を見出す戦略になる。
▼変化するニーズを取り込もうとする各社だが、21年度の業績はコロナ前の状態に戻りきれていない。チェーン全店売上高がコロナ前を上回っているのはセコマのみである。そのセコマの赤尾社長は、業界誌の中で「コロナのせいで悪くなったように見えるが、実際それ以前からマーケットは縮小している。ビジネスモデルの転換が必要」との指摘している。それだけに今期は、コロナ前の業績に戻せるか、どこまで近づけるかが焦点となる。当然、スーパーマーケット業界への影響もあるだろう。
(2022・06・20)