未来の可能性が見えると、違う光景が見えてくる・・・

「異常気象」の言葉が使われ始めて久しいが、今年は本当に異常だ。6月中に連続で真夏日を経験してしまい、外出するのも億劫になる。少し前まで「暑い日は、大型商業施設にでも行き、涼しい場所で一日を過ごしたい」などの言葉をよく聞いたが、コロナ渦後も同じような行動があるのだろうか。27日の東京の最高気温は35度を予想され、夕方以降も冷房などの電力使用は減りにくい見込み。(このブログ、27日の朝に書いている。)

▼経済産業省は、東京電力管内で27日の電力需給が厳しくなる見通しとなり、初めての「需給逼迫注意報」を26日に発令した。想定よりも気温が高くなり、午後3時から午後6時の間、電力の供給余力(予備率)が5%を下回るとみたためだ。

この需給逼迫注意報は3月22日に東電管内で電力需給が逼迫したのを受け、5月に新設されたものだ。それまで予備率3%を下回る際に「需給逼迫警報」を発令する仕組みだった。

▼3月に起きた福島県沖の地震で火力発電所が損傷、供給力が低下したことが背景にあるが、電力小売りの自由化に伴う安売り競争や太陽光発電の普及に伴う古い火力発電所の休廃止が進んでいることも要因である。全国の電力会社は、火力発電の出力増加、地域間の送電線を通じた電力の融通など追加の供給力対策を実施するとしているが、「さらなる気温の上昇に伴う需要増加や、突発的な電源トラブルなどが生じれば予備率は3%を下回り、警報発令の可能性がある」と協力への依頼と脅しのような対応になっている。電力確保は国の重要な責務なのだから、ここ数年の電力政策を振り返る必要があるはずだ。

▼需給ひっ迫を回避するには、供給力を上げるか、需要を減らすしかない。ただ、DX(Digital Transformation)時代での未来に向けての革新は、AI(人工知能)、ロボットなど、今より電力を使うものばかりだ。電力の足りない国では、技術革新は起きにくいので、世界の経済ランキングは更に厳しくなると推測される。

これまでの電力自由化の流れ、再生可能エネルギーの位置づけ、そして原子力発電をどうするか…。これまでは原子力発電再稼働論に終始し、賛成、反対だけがクローズアップされてしまった。数年先を見据えて、将来の形を描いてのエネルギー政策につなげ、だから今、何をどうするかを説明して欲しいのだ。

「どうしても人間は過去の経験に縛られやすい。『こうありたい』という思いを先ず描く。未来の可能性が見えると、これまでとは違う光景が見えてくる」と言った小売業界でカリスマ経営者と呼ばれた方の声を思い出す。

(2022・06・28)