ベゾスのフライホイールが逆回転か・・・

「Amazon Fresh」の顧客からの評価が良くないという。しかも、Just Walk Outを導入したハイブリッド型が目立って低評価ということだ。Amazon Freshは、南カリフォルニアに15店舗、シアトル周辺に4店舗、シカゴ郊外に8店舗、バージニア州に3店舗、メリーランド州1店舗、ペンシルベニア州1店舗、ワシントンDCに1店舗の合計33店舗を展開している。うちハイブリッド型はロサンゼルス郊外に7店舗、シカゴ郊外に4店舗、シアトル周辺に2店舗、バージニア州に2店舗の15店舗となっている。

▼Amazon Freshの初期の頃に導入された「ダッシュカート」を使用した店舗よりハイブリッド型が評価を下げている。原因は、Just Walk Out の精度の低さと関連しているらしい。購入していない商品が計算されていたり、それを訂正するのに手間がかかったりとJust Walk Outのエラー関連の苦情が目立っている。米国人特有の皮肉言葉で「ハイブリッド型が一番のウリにしている『行列を素通り』にデメリットが多く、行列さえできない」と言っており、安くもないし、欠品も目立って多いので閑散としている店舗もあるという。

▼米国流通コンサルタントの後藤文俊さんは、「『Flywheel』の逆方向の循環がアマゾン・フレッシュで回りだしている」と皮肉っている。Amazon.comの創業者ジェフ・ベゾスの思いついた「Amazon Flywheel Effect」だが、低コストのビジネスの仕組みを作ることで、顧客に低価格で商品を提供し、商品を安く提供すると顧客に高い満足度を与えることになる。満足した顧客は再び買い物をするため商品全体の取引量が増加する。取引量が増加すると、さらに販売企業が参入する。サードパーティ等の企業がより多く参入すると、商品の品揃えがさらに増える。そして品揃えがより豊富なことで顧客満足度はもっと高くなるというサイクルが持続しアマゾンの成長が加速するというものだった。

▼ところが、「Amazon Fresh」の店舗では、Just Walk Outの精度が低いため、低評価で集客に影響が出る。集客が落ち始めると、廃棄ロスが増えるので生鮮品の品揃えが悪くなる。欠品が客離れを加速させ、更に品揃えが悪くなり、ネットスーパーでも代替品が多くなってくる。品揃えに不満なネットスーパー客も減少するとますます品揃えが悪化する。結果として精肉・鮮魚の冷蔵ショーケースが埋まらなくなる。鮮度の良くない商品の陳列は、店に来る人も注文する人もさらにいなくなる負の循環が始まっているようだ。

アマゾンは今年3月、「Amazon Books」「Amazon 4-Star」「Amazon Pop-up」の全店をスクラップすることを発表した。Amazon Freshも全店閉鎖となっても不思議ではない。

Amazonといえど、大型店舗でのJust Walk Outの精度維持に加え、実店舗、特に生鮮食品の管理の難しさの壁にあるようだ。

(2022・06・29)