22年度の最低賃金改定の議論が始まった・・・

中央最低賃金審議会が開かれ、22年度の最低賃金改定の議論が始まった。労使の代表者と有識者らで協議して、7月下旬にも都道府県別に引き上げ幅の目安が示されることになる。最低賃金は都道府県ごとに毎年10月ごろ国が改定するのだが、この中央最低賃金審議会の目安を基にし、都道府県の審議会の議論を経て決められる。毎年改定される賃金の最低額で、下回った場合は差額支払いの義務、罰則がある。

▼今年度の焦点はインフレの影響になるだろう。5月の消費者物価指数は総合指数で2.5%の上昇に達した。物価が上昇すると実質賃金は目減りするので、4月は1.7%の減少であった。海外ではいち早く最低賃金の引き上げが加速している。物価などに連動して決めるフランスは5月、時給約10.85€(約1560円)に引き上げた。ドイツも7月に10.45€、10月には12€に引き上げる予定だ。日本の実質賃金は1%減が続くとの見方もあり、日本の賃金が上がっていないことの報道が続いているので、気運は引き上げを求めている。閣議決定された経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)でも「できる限り早期」に最低賃金を全国加重平均で時給1000円を目指す目標を掲げていた。賃金引き上げの機運醸成へ躍起だ。

▼昨年度の改定実績は、全国平均時給が28円上がり930円になっている。20年度を除き、毎年3%以上引上げの実績もある。ただ、企業側は物価高に伴うコスト増や長引くコロナ禍の影響を考慮して大幅な引き上げには慎重にならざるを得ないだろう。日本商工会議所と東京商工会議所の調査結果では、最低賃金の水準が「負担になっている」との回答が65.4%に上っている。宿泊・飲食業が90.9%、小売業が81.4%とコロナ禍の影響の大きかった業種が上位に並んでいた。

現場的に考えると、慎重姿勢を強めざるを得ない。われわれの業種は、最低賃金近い金額で働く人が多く、改定すると多くの従業員の賃上げが必要になる。改定が賃金構造全体に与える影響が大きいのだ。極端にいうと全員の賃金改定が必要になる。

▼これまで、全国平均の時給の上昇率は16年度3.13%(25円増)、17年度3.04%(同)。18年度3.07%(26円増)、19年度3.09%(27円増)。20年度は新型コロナウイルスの影響で1円増に留め、21年度3.10%(28円増)と3%台の上昇が続く。その上、最低賃金を支払うだけでは、人手不足は充足できずに採用時給を考慮せざるを得ないとなる。結局は、価格転嫁しやすい環境整備、デジタル化の促進、従業員の学び直しを促し、生産性改善の取り組みが欠かせない。

(2022・06・30)