米国小売業の店舗視察で必ずコースに入り、チェーンストアのモデルとして位置づけられていた『ベッドバス&ビヨンド』の業績が悪化している。最盛期には40%以上の荒利を維持し、ホームファーニッシング最大手チェーンに何が起きているのだろうか。「超優良小売企業だったのに第2のシアーズのような状態に陥っている」と表現をするコンサルタントもいる程だ。
▼第1四半期(3月~5月期)決算だが、売上高は14.6億ドル(前年同期比25%減)、最終赤字は3.58億ドル(同5,100万ドルの赤字から7倍以上拡大)と膨れ上がった。既存店売上も前年同期比23.0%減となり、前期(12月~2月期)の12%減少からも大幅に落ち込み、過去最悪となった。株価も前日比24%減と暴落している。客離れが明確に進んでいる状況である。しかも、Eコマース売上でさえ前年同期比21%減という状況だ。
▼業績結果は、インフレによる消費需要の低迷、サプライチェーン問題で営業コストの増大が利益を圧迫したとあるが、荒利益率は23.9%(前年同期32.4%)となり8.5ポイントも落ち込んだ。これまでの最低記録は、コロナが急拡大した2020年の第1四半期で26.7%であったので、過去最低の数値より、さらに2.8ポイントも低いことになる。反面、一般販売管理費は43.6%(前年同期33.7%)で10ポイントも増加している。既存店売上は、リーマン・ショック時でも5.6%減にすぎなかったわけで、いかに客離れが進んでいるかということになる。
▼22年6月現在の店舗数は、米国やカナダに955店を展開している。前年同期には1,004店舗を展開していたので49店舗減少したことになる。内訳はベッドバス&ビヨンドが769店舗(前年同期818店舗)、バイバイベイビーは135店舗(前年同期132店舗)、ハーマン・フェース・バリューが51店舗(前年同期54店舗)である。2年前にもリストラ計画があり200店舗削減を掲げているので800店にまで縮小するのであろう。
ただ、プライベートブランドは拡大しており、この1年の間に、室内装飾や収納、キッチン&ダイニングなどの戦略的ブランド「Simply Essential」を発表。また、女子大生など若い女性向けのリネンや室内装飾、家具のブランド「Wild Sage」、オリジナルのキッチンブランド「Our Table」や収納ブランドの「Squared Away」なども発表している。
諸悪の根源は、過去の成功体験から脱却出来ず、旧態依然のチェーンストア理論にしがみついていたことにある。業績が悪化していたにも関わらず1,500店まで店舗数を増やすなど、IT投資を怠りリアル店舗に投資していたのだ。
物流不全に40年ぶりとなるインフレで、遅すぎた改革の影響をもろにうけていることになる。
(2022・07・04)