小売業を取巻く環境は、生産性改善の契機になるか・・・

コロナ禍が収束に向かいつつあったが、2週間近く前週同曜日の感染者数を上回っており、怪しい。インフルエンザの流行の兆しもある。その中でインフレの加速、エネルギー価格や原材料価格の高騰、異常な気象の動きなど事業環境の不透明感が更に強まった感じがある。コロナ禍での行動制限が緩和された3月以降、社会経済活動の回復に伴って全体的に安堵感が広がり、良い感じがあったが束の間の夢であったのだろうか。

▼ましてや所得が上昇しないまま、インフレやコスト増がより顕著となると、消費者の値上げに対する抵抗感は強まる。全体的に低価格志向が高まり、「同じ商品ならより安く買いたい」という動きだけでなく、商品や店舗のグレードを下げる行動に移りそうだ。するとディスカウントストアにとって顧客基盤を拡大する好機となるのかも知れない。ただ、これまでディスカウントストアを利用していない消費者があるきっかけで来店した時、店舗の立ち位置をきちんと訴え、消費者の需要に応える施策を提供できるかがポイントになる。

▼こんな折に、決算発表会時のSM各社の今年(22年)度の業績予想を見ると、外部環境の厳しさへの対応より個別の施策とその期待成果に関する話が多く、やや楽観的過ぎるのではとの気もする。年初の状況と異なる状況が起こり始めているので、様々なシナリオを用意する必要があるはずだ。日本の小売業界は長年に渡り、生産性の低い企業が温存され続け、結果として供給過剰が解消されず、優良企業の収益性が阻害され全体の生産性や収益性の低さの要因となっている。消費者の節約志向が強まるなか、業態を超えた競争は激化するはずだ。

▼SMはこの10年、ドラッグストアとの業態間競争を余儀なくされ、「SMとして自分たちはどうあるべきか」が問われて続けて来た。そのドラッグストアは、売場面積を拡大した「フード&ドラッグ」の出店を加速させ、グロサリーを中心とした食品の低価格訴求によりSMのシェアを侵食して来た。しかしドラッグストアも、業態全体として転換点を迎えつつある。寡占化が加速して大手チェーン同士の合従連衡へと移って来ている。ドラッグストアも「何を差別化要因として、どのようなことに取り組むのか」を軸とした見方に変わる転換期になるはずだ。

ドラッグストアとは異なる来店動機を提示したSMは、ポジショニングがとりやすくなっているはずだ。企業間の格差は複合的な要因があるのはもちろんだが、経営トップが一貫した方針を掲げ、これを着実に実行できる組織や仕組みを整え、業態間競争への対応に備える「総合力」こそ、最重要な要素と思える。

これからも継続的に原材料費や人件費、物流費などが上昇すれば、利益を確保しづらくなり、事業を継続できない企業は淘汰される。その結果は、小売業界全体の生産性改善の契機になるかもしれない。

(2022・07・06)