スーパーマーケット(SM)各社の業績は、減収のみならず大幅減益も珍しくなくなって来た。勿論19年対比で見れば総じて高い水準にあるが、減収傾向は否めない。特にゴールデンウィークを境に流れが変わった感もある。コロナ禍で見られた内食偏重からの揺り戻しは今期も続く可能性が高く、企業規模の差はあまりなく全般が同じ様な傾向だ。
▼これからは、利益の確保面では更に難しくなりそうだ。商品原価は軒並み上がり、電気代が前年比 1.5倍という月も出ているという。企業の規模にもよるが、年間計算すると数億〜数十億円の電気代増を覚悟しているという声も上がっている。これら、調達コストや光熱費、円安など企業努力の及ばない領域での問題が襲って来ている。解決に向けて、店舗オペレーションを効率化する為に自動発注システムやセルフレジを導入する動きはますます加速している。電子棚札などの導入も検討材料に上っている企業も多いと聞く。
▼いくら業務の効率化を図っても、利益の源泉は販売にあるので、各社とも利益確保を図るためには、オリジナリティの高い商品導入が欠かせなくなって来ている。そのため、惣菜の構成比を高める、生鮮の加工度を高める、プライベートブランド比率を高めるなどの戦略を打ち出す企業が増えている。この取り組みは、従来からのものには違いないが、インフレの状況下ではより切実な課題になっている。
惣菜の構成比を高めることの重要性は、荒利益率の高さに加え、売上構成比の大きからも理解できる。既に鮮魚部門を上回り、精肉部門の売上構成比に迫りつつあるのだ。また、生鮮の惣菜化として進められてきた生鮮の加工度を高める工夫だが、サラダやカットフルーツ、魚部門の寿司や惣菜、ミートデリカなどで簡便ニーズに対応させることで荒利益率も高まっている。ただ、店内だけでやるのは限界があるので、プロセスセンターを整備し体制を整えることも重要になって来ている。
▼これまで、消費者の節約志向が高まると、PBや留め型商品で低価格帯を拡充してきた。これからも価格対応は必須なのだが、自社にしかない、NBとは違う価値を提供しなければ、多様化する消費者ニーズを拾い切れないとの問題意識が高まって来た。PB商品も、NB商品の廉価版から、独自の価値を追求するためライフスタイル軸が重視されている。ライフスタイル軸とは、ある人には最高の価値のものが、他の人には無価値となり得る価値基準を指すものだ。それは、「安い」だけでも「美味い」だけでもない別の判断基準が購買理由になるものだ。PB商品は、この特定価値軸を持った商品を部門横断的に展開できる点でNBよりも優位なところである。小売各社が、これらのPB商品を、どのようなマーケティング展開をしていくのか興味深いことである。
(2022・07・08)