「第55回 小売業調査」が日経MJ(7月27日号)で発表された。この業界にお世話になった頃は、「小売業売上高ランキング500」を見るのが本当に楽しみだった。今ほど小売業の統計調査がある時代ではなかったので、年一度のこの調査報告で自分の所属企業(組織)の順位を見て、前年に比較してのランク上下に一喜一憂したものだ。
▼今回発表の21年度の小売業の総売上高は56兆3105億円と復調してきた。業種別では行動制限に伴う需要が追い風となり通信販売が14.3%増と最大の伸び率。専門店は3.8%の伸び。ホームセンター、ドラッグストアが成長した。百貨店は会計基準の適用で計上方法が変わっているが、比較可能な37社で7.2%増と回復傾向にある。
企業別の売上高1位は「セブン&アイ・ホールディングス」、2位は「イオン」だった。セブン&アイが首位になるのは11年ぶりとある。米国「スピードウェイ」を買収したことで、51.7%増と大きく伸ばしたことによる。営業利益も5.8%増の3876億円で首位だった。「アマゾンジャパン」が3位、「ファーストリテイリング」が4位は前年と変わらなかった。5位は「パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス」で前年の6位から1つ順位を上げた。
▼この調査で、前回調査と顕著な違いが出たのが「価格政策」になる。22年度の方針で「コスト上昇分を転嫁し販売価格を引き上げる」と答えた企業は全体で48.8%に上った。前回調査(5.9%)から約8倍に急増した。業種別で「販売価格を引き上げる」とした割合が高かったのはスーパーで、63.2%。前回の6.5%から約10倍になった。「価格を維持する」とした回答は、今回調査では22.2%(前回は66.9%)と3分の1まで縮んでいる。背景には、原材料高によるNB商品の値上げが相次ぎ、仕入れ値が上昇し販売価格に転嫁せざるを得ない状況にあるからだ。
▼こうした状況にどう対応するのか。調査では、「PB商品の価格をできるだけ維持しながら、取扱量を増やす戦略をとる」企業が多いようだ。「PBを増やす分はNBを減らす」が30.9%、PBの品目数も60.6%が「増やす」としている(複数回答)。スーパーのPB商品の価格政策は、56.4%が「従来通り」だが、今回調査では「上げる」とした回答も18.1%に上った(前回から12.9ポイント上昇)。さまざまな原材料高でPBにも値上げの波が来ている。小売業全体では16.1%がPBの価格を「上げる」と回答。コンビニエンスストアは7社全社が「引き上げる」と回答している。
勿論、NB商品の割引販売を続ける動きもある。中堅のリージョナルスーパーは、「NB商品の値下げを強化する」と答えた企業が18.2%を占める。「価格を上げる」が46.2%にとどまり、「価格を維持する」が38.5%だった。価格で競争する姿が垣間見える。
原材料高の中で商品政策の巧拙がこれからの収益を左右するであろう。
(2022・07・29)