「ワークマン」のTVCMが吉幾三から変わった・・・

先日参加したセミナー(島田研究室・島田陽介先生)の中で、ビッグストアの衣料品、特に「ファッション衣料」と言われている部門は、なぜ再起しないのかとの話が出た。もう何年も前になるが、百貨店のファッションフロアに並ぶアパレル・メーカーのブランドショップの商品を、ショッピングセンターに出店している専門店の売れ筋商品をトレードオフして、短時間に売場に陳列することが戦いの武器ともてはやされた時期があった。当時、『マス・ファッション』と本が売れていたが、それはイミテーションの奨めでもあった。

▼市中街で売れた商品、売れている、売れるであろう商品の廉価版を狙っていたのだ。問題は、コピーすることにあるはずだ。イミテーションであることは一目瞭然だからである。しかも、ファッションの世界は「マス」ではなくなった。このような環境下で、ファッション要因の「影響」を無視し、独自ファッションを提示したのが「ユニクロ」になる。ユニクロは、価格を訴求しただけでなく、スタイルを提示した。「価格の高い、それを誇示するファッション、ましてやそのイミテーション」を身にまとうライフスタイルを否定し始めているという。

▼売れているものを真似するのではなく、独自の品揃えを開拓することの重要性の話になる。話題の「ワークマン」のTVCMが変わった。「あなた何も知らないのね」と言い放つ武田 莉奈のTVCMは20年から放映されている。かつては、吉幾三を起用していたのにだ。当時は、「工事などで働く人々」を、顧客とみなしたからだ。ユニクロも当初、フツーのオジサン・オバサンを用いていた。初期ユニクロのカスタマーは、「綾瀬はるか」とは似ても似つかぬものだったのだろう。

▼一体、何が起きたのか。品揃えが変わった、新しい提案方法(テーマ・売場)とそれを実現するための商品群を開拓したからである。

ここからも島田先生の説であるのだが、「なぜこれらが開拓出来たかは、簡単なことであると話された。それは、数字データではなく、現実の店舗・売場のお客を、見て、その意味を考えたものがいたから」という。新しいカスタマーの姿を、売場で現実に「見た」、「発見した」からだ。それは現実に売場で「見なければ」気づくことのない事実である。販売データだけ集積分析していたのでは、顧客層を発見できないのだ。その購入実績は一片の数字データに過ぎず、DXやAIもソレを見逃すケースが多いはずとも話された。

「わが社の(店舗・売場の)お客」を、直接この目で見ることが出来るのは、流通業と外食業に限られる。リアル店舗に必要なエリアマーケティングの観点からも、この事実を大事にしたいものだ。

(2022・07・31)